ぺん

PERFECT DAYSのぺんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
彼の洗練されたルーティンは一見単調なようだが、子供や同僚、ホームレス、姪家族との出会い別れ、見知らぬ人との⚪︎×ゲームなど、何気ない日常でも変化がある。そんな些細な機微を捉え、心に刻むかのように彼は微笑む。木漏れ日は光と影の一瞬を捉えたもので、決して同じ姿にはならない。「影は重なると濃くなる」と信じ、単調に見える日々を重ねていく。

世間的には地位が低いとみられる職でも、誇りを持って向き合うプロフェッショナリズムが伝わり、清々しささえある。住む世界が違うなんてことは決してなく、色々な人が関わり合って社会のシステムができている。そう感じ、自分も自分の仕事を全うする活力になりそうだと感じた。



…ところが。



鑑賞後、何気なく見た本作の公式サイトで見つけたのは『映画にならなかった、平山の353日』。実は映画で切り取られていたのは特別何かがあった日々で、残りほとんどは何も起きない単調な日々だった。私なら人生の長さに絶望してしまう。

しかし彼にとっては、「何もかもがどこか遠い。そしてこのぐらいが心地いい」。悟りを開いたかのよう。たとえ単調な日々でも幸せを感じられるのは、彼の内面が深く豊かだからだろう。我々は世界を理解するにはちっぽけすぎるからこそ、安易に変化や刺激を求めてしまうのかもしれない。
ぺん

ぺん