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PERFECT DAYSのsuwaのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

木が風で揺れる。
そうすると葉がカサカサと音を立てて、その隙間から光がキラキラ見える。
わたしたちはそれを木漏れ日と呼んでいる。

わたしたちの日常もそれに似ている。
大筋では代わり映えのしない毎日でも、少しずつ何かが変わっている。
泣きわめく子供との小さな交流があったり、いつも行く定食屋のいつもとは違う席から少し違う風景が見えたり。
そんな小さな変化のキラキラを、平山はとても大切にしているように見えた。

しかし一方で、小さな変化はキラキラだけではない。
少しずつ少しずつ病魔が体を侵していったり、当たり前のようにそこにあった家が急になくなって、でもそこになにがあったのか気づかないように。
木漏れ日も、葉の影がなければ成立しない。
葉が風で揺れて、時には葉が重なって影がより色濃くなることもある。

劇中、平山の家族との過去を想起させるシーンがある。
家族との形が変わるのは、木漏れ日のような小さな変化とは呼べないだろう。
それは木の枝の幹に近い部分から折れてしまうような、大きな変化だ。
そのシーンで、普段は喜怒哀楽の感情が読みづらい平山が、妹にハグをして、ぐっと泣いていた。

木漏れ日は、光があるだけでは成立しない。
影も含めて、木漏れ日がある。
些細な小さな光を大切にする平山にとっては、些細な小さな影も、もしかしたら人一倍感じ取っているのかもしれない。
平山の最後のシーンを見て、そんな日常の喜びと悲しみを、それを全部含めて、平山が愛しているのだと思った。

みなさんは最後のシーン、どう見えましたか?
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