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PERFECT DAYSのmmmのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

各SNSでフォローしてる方が年明けからこぞって絶賛していて気になっていた本作。

あらすじ的に日常系なのは察していたけど、あの役所広司が始まってからまっっったく喋らない。

風呂なしアパートにすむ中年の独身男性。机どころかベッドもなく、カーテンを開けっぱなしにして近所の住職が掃き掃除する音をアラーム代わりに、日が登る前に目覚める(かなり早そう)

身支度の中で見えてきたのは『THE TOKYO TOILET』の文字。どうやらトイレ関係の人らしい。つなぎだから現場の人っぽい。

朝日に照らされるスカイツリーを笑顔で眺めながらカセットテープで音楽を流す。音楽の入れ方がオシャレすぎる。ハァ〜〜〜!?

どうやらトイレの清掃員らしく、あれよあれよと件数をこなしていく。ここでびっくりしたのが登場する公共トイレのおしゃれなこと!

屋外の公共トイレなんてゴミまみれで小型カメラ仕込まれてたりしそうだから絶対使わないけど(そういう偏見を払拭したい意図もありそう)こうして丁寧に掃除してくれてる人がいるから安心して使えるんだな、と感謝🥲

仕事仲間のタカシが現れても全く喋らずジェスチャーで返事する。このあたりからもしかして喋れないお方なのかも…?と疑い始めたけど、その後普通に喋ってて笑った。喋れるんかい!無口にも程があるやろ😂

夜明け前に起きて、日の出とともに出勤、ランチは神社のベンチで木々のざわめきを楽しみながら。退勤後は自宅から自転車範囲の銭湯で1番風呂(15時ごろかな?)浅草地下のなじみの店でご飯を済ませて寝落ち寸前まで読書、そして入眠。

この確固たるルーティンの中に『他者からの刺激』が入ることで毎日が同じなようで違うことをじんわりやんわり伝えてくる。

タカシの想いびと・アヤちゃん、姪のニコちゃん、行きつけのスナックのママ、と展開が変わるところには必ず女性の姿があり、この、一見つまらなさそうな無口な中年男性『平山』が確かにモテることを嫌でも伺えてしまった笑

姪のニコちゃんが家出して突然家に来てしまったとき、年頃の女の子との接し方にドギマギしてるのが可愛かったし、闇雲に家に帰そうとしたり無理に理由を聞かなかったことが、あの年頃の子にとって安心できる拠り所なんだなと思った。

ニコちゃんを銭湯に連れて行って、顔馴染みのオジたちが顔を付き合わせて「…?」やった時、一緒に映画見てた人たちとみんなでクスクスしたのはなんか良かった。

ニコちゃんは運転手付きのママが迎えにきた。ママは平山の妹らしく、平山を勘当した父親は施設に入り記憶があんまりないらしい。平山はいいところの家の出身なのだと明かされた。

妹は「戻って」と言うけど平山は何も言わず妹を抱きしめてお別れを言う。ニコちゃんと妹が帰ったあと、平山は泣いてた。

ニコちゃんとの数日間が楽しくて、人の温かみを久しぶりに感じてしまって、でも自分はそれを受け続けていい人間じゃない、だから妹の誘いを断って家族と“お別れ”したんだろうなぁ…と胸が苦しくなった。ニコちゃん、また叔父さんのところに遊びに来てあげてね。

この映画を見る前、一緒にバイトに入ってた25歳の男の子が、交際1か月の彼女と半同棲状態になってると話してくれた。

『贅沢せず自分だけで営む生活に満足している』『1人で楽しむ趣味がある』平山のようなタイプの人を、そのバイトくんは理解できないだろう。多分彼がこの作品を見ても「つまらない」のジャッジをするだろうなぁ、と淡々と進む映像を見ながら感じてしまった。

恐らく金持ち家系だった人が携帯電話も持たず風呂なしアパートで清掃員として生活していたら、多くの人は「かわいそう」と感じたと思う。私もそう思ってしまった。

けど平山は毎日同じことの繰り返しでも、家で風呂に入れなくても、本は新品で買えなくても満足してて。
好きな音楽はカセットテープに入れて、洗濯はランドリーにぶち込んで、お気に入りの店が何軒かあれば、心が豊かになって。

同じく日常系のパターソンを見た時は、パートナーと天真爛漫なパートナー、愛らしいマーヴィン🐶がいたせいか「つまらない」は一切感じなかったけど、派手に光るスカイツリーと間反対の生活を送る平山はその対称っぷりに「私だったら…もう少し刺激…ほしいかも…」とゴモゴモしてしまい、本作を絶賛していた各SNSの方たちと同じ気持ちにはなれなかった。

「めちゃくちゃいい!」になるか「つまらん」になるか、かなりハッキリ分かれそう〜〜〜〜〜と思いながら映画館を出た。

その日、布団に入ってもずっと平山の生活が頭の中で無限に流れてきて、なかなか眠れなかった。
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