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メイ・ディセンバー ゆれる真実のrenのレビュー・感想・評価

4.4
試写にてひと足早く鑑賞させていただきました。

昨年のカンヌで発表された時からとてもとても楽しみにしていた本作。過去の事件を題材にした映画ということだったので、直近だとダーク・ウォーターズも記憶に新しかった。そんな中、今回は監督得意な女性が中心の事件が題材ということもあり、一体どんな作品になるのか気になっておりました。

実際に鑑賞したところ、トッド・ヘインズ監督の物事の捉え方、撮り方、人物造形についてどんなアプローチをし、どんなふうに描くのか、そのプロセスを示しているような内容で、まずは監督のファンとして感激。まさか、実話の事件を元にした映画で、いわゆる「映画についての映画」的なところを見せてくれると思っていなかったので。
そして、人間の複雑さについて登場人物たちを誰も信じられなくなるようなストーリーにのめり込んでしまった。
本人たちや関係者に話を聞いて、その人のことを「わかった気になる」感覚は、私たちの日常でもよくあることだと思う。しかし、そこに「そんなわけないだろう」と、多面的な見せ方で否定する。真実や本心なんて、本人ですらわかってないことだってあるのだから、と。
ジュリアン・ムーアやナタリー・ポートマンが同化していく見せ方が本当にうまくて、女優たちの力と撮影の効果で恐ろしくも美しい。
また、映画の要所要所で挿入されるピアノの劇伴はなんだか大袈裟な曲だ。前半はちょっとびっくりするというか、「なに?」と思ってしまう感じなのだが、何故だかだんだんと後半になるにつれ耳が慣れてきて「そろそろ鳴る頃かな…」と思い始める始末でもはや面白いくらいだった。でも内容が内容だけに笑えるわけもなく(笑)
気にしていたら、試写後のアフタートークで現地上映の観客のリアクションが、挿入タイミングで笑いが起きていたとのこと。これを聞いて流石に笑ってしまいました。おそらくこれも見どころのひとつでしょう(笑)
今作はあくまで「実話を基にした」だけで、事実を映画化したわけではない。以上のようなフィクション的な表現が重なることによって、いろんな側面を見せる人間ドラマになっていたと思う。素晴らしかった!!
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