MasaichiYaguchi

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
19世紀イタリアで、カトリック教会が権力の強化の為に7歳になる少年エドガルド・モルターラを両親のもとから連れ去り、世界で論争を巻き起こした史実をもとに描いたドラマは、国家や教会などの絶対権力による策略に巻き込まれた普通の人々の悲劇や無力感を浮き彫りにする。
1858年、ボローニャのユダヤ人街に暮らすモルターラ家に、時の教皇ピウス9世の命を受けた兵士たちが押し入り、何者かにカトリックの洗礼を受けたとされるモルターラ家の7歳になる息子エドガルドを連れ去ってしまう。
教会の法に則れば、洗礼を受けたエドガルドをキリスト教徒でない両親が育てることは出来ないからだ。
息子を取り戻そうとする奮闘する両親は、世論や国際的なユダヤ人社会の支えも得るが、教会とローマ教皇は揺らぎつつある権力を強化するために、エドガルドの返還に決して応じようとはせず、事態は硬直化する。
絶対権力と市井の民、その間に存在する暴力と冷笑の不均衡さが、年月の進行と共により鮮明に描き出されていき、実話であるということに背筋が寒くなっていく。