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ポトフ 美食家と料理人のbluetokyoのレビュー・感想・評価

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
3.7
自分は料理とか美味しいものに興味がないということが再認識できた。前半は、これは失敗したかなと思ってしまった。もちろん、美味しい料理、とくにフランス料理に興味がある方にとっては素晴らしい内容であると思う。時代背景は、19世紀末らしいのだが、当時の調理器具、調理場も再現されていて、興味津々となるに違いない。だが、この映画は「美味しんぼ」などではない。登場人物が料理のウンチクらしきことを語るのは、一番最後のシーンだけ。あと、アイスクリームを入れたノルウェー風オムレツ? 料理はひたすら作るシーンと食べるシーンのみ。
ではなにがテーマになっているのだろうか。それは、人間賛歌であると思う。人間エゴということではない。この時代を選んだのは、かろうじて、まだ、自然環境と人間の生活がそれほど断絶していなかったからだろうと思う。間断なく外から、小鳥や家畜の声が聞こえ、窓からは、自然な光と穏やかな風、である。
そんななかで、美味しい料理を追求し、美味しい料理を味わうことは、すなわち、人間賛歌であり、自然賛歌になっていたのだ、と思える。

主人公は美食家のドダンと料理人のウージェニー、そして、助手のヴィオレット。美食家となっているが、いまふうに言えば、プロデューサーというところか。しかも、料理人としても、凄腕なのである。

で、ドダンとウージェニーが、ずっと美食家と料理人という関係だったのだが、熟年結婚するのだ。おそらく、ウージェニーが病気で倒れてしまったからだろう。ドダンは、結婚の申し込みをするときに、自ら料理の腕をふるう。
その料理を調理する手際が、妙に艶めかしいのだ。まるで愛撫するみたいに調理していく。

ところが、まあ、だいたいこの展開だと、想像できてしまう通り、ウージェニーは、あっさり亡くなってしまう。

ここからが、この映画の見どころだと思う。

とりあえず、助手のヴィオレットが、天然で面白い。

ヴィオレットをウージェニーのように育てようとしたのかわからんが、骨髄かなんかの料理をヴァイオレットに味見させると、さほど美味しそうな感じではない。
ドダンは、それは、きみが若いからだよ、と答える。それが、また、なんか艶めかしいのだ。
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