夫殺しの容疑をかけられた女性をめぐる法廷劇。
法廷での証言により夫婦の関係性が明るみにされる。仕事のこと、夫の抱える不満、妻の性癖と不実な行い。でもそれらは決定的な証拠じゃなくて、夫の死という結果に結びつけられそうな事実というだけ。
「何が真実かわからない時は自分で真実を決めるしかない」幼い息子は悩みに悩んだ末にある証言をするが、それはあくまでも彼の記憶であって証拠ではない。
この映画には回想シーンがない。パンフで監督がインタビューに答えているように、2か所ある回想シーンはいずれも主観的なものであって、記憶の映像化。観客にも正解は提示されない。だから映画を見終えてもモヤモヤが残って、いつまでも余韻に浸っていられる。
家族や夫婦ってみんな何らかの秘密を抱えていると思う。普通の顔をして日常を送っているけど、そんなことは墓場まで持っていく覚悟で生きている。客観的な事実だけで割り切れないから人間って面白いと改めて思う。
