てん

落下の解剖学のてんのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7
"何が真実かなんてどうでもいい、周りにどう思われるかが大切なんだ"

パルムドール受賞作でアカデミー作品賞ノミネートと、昨年だと『逆転のトライアングル』の立ち位置での公開ですね。
内容は全然違いますけど。

"これは事故か、自殺か、殺人か"
のキャッチフレーズのとおり、真相解明ミステリーものかと思ったら、法廷サスペンスと言えばいいのか、予想してた内容と全然違ったけれど、全編通しての不信感でモヤモヤする感じが見応えあって良かったです。

特に法廷シーンが印象的だし、何が本当か分からないので、途中で差し込まれる傍聴席の傍聴者と自分が同じ立ち位置なのかと気づかせられるのもおもしろい。

録音されていた夫婦の口喧嘩は、大きな見せ場の一つであったと思う。
夫婦感の実情と各々の内面が引き出されるシーンだが、これも実は…って思わされる空気感も絶妙だ。

"みんな真実はどうだっていい、小説家の妻が夫を殺したって方がおもしろい"的なことをニュースキャスターが言うのも、昨今のメディアに対するメタ的なことだろうし、フェミニズムやら様々な問題定義をさらっと出してたのも、フランス映画的な皮肉り方なのかなぁと思ったり。

最後の最後まで、明らかになる事実もそれが本当なのか?という疑念や想像するしかないものばかりで進んでいく裁判だったことで、居心地が悪いが、そもそも何が真実か知る由もないので、決定付けるしかないという極論に追い込まれた際の判定はそこなのか…と、何とも言えない感じ。

"敗けるのは最悪、勝っても何も残らない"というサンドラの言葉を借りれば、知られたくなかったことも含めて、世間にも、大切な息子にさえも知られてしまう、傷つけてしまうというのは辛く、悲しきものだ。

寝ているところに寄り添いに来てくれたスヌープは、全てを知っていたのかなぁ。

そうそう、スヌープが凄すぎて圧巻の演技!っていうか演技なのか??ってくらいこわくなりました。
てん

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