リプリー

落下の解剖学のリプリーのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
夫の不審な転落死を目撃したのは盲目の子どもだった―。この設定だけで自分好みだとは思っていたが、想像以上の面白さで個人的には今年劇場鑑賞した中ではベスト級だった。

確かに基本は法廷劇でセリフの応酬がメインなので地味ではある。しかし、法廷を通して明かされる出来事、その順番が的確で150分の長尺を感じさせない。
真実を語りたいと話す主人公に弁護士は「そういう問題じゃない」と何度もいう。
確かに裁判は焦点がはっきりとしており、それに際し“どちらがそれっぽいか”を争っているように見える。
そして映画もグレーなところを多く残し終る。
そもそも息子の証言はどちらが真実なのか、など謎は多い。このあたりは僕もパンフを読んで気付かされた部分もあった。

パルム・ドールやアカデミー賞効果もあってか小さめのスクリーンではあるのもののほぼ満席。通路を挟んで座っていた女性が結末に涙を流しており、これをシンプルにいい話と捉えるのかと驚いたりもした。

ちなみに子どもが終盤あるとんでもない行動をするのだが犬好きとしてアレは心のなかで激怒してしまった。