土平木艮

落下の解剖学の土平木艮のネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

●結構な話題作なので、混雑を避けたくて平日昼間に観に行った。それでも結構客が入ってた。



●何となく観てた鑑賞中は『そんな騒がれるほど良い作品か?』と思ってたけど…帰宅してパンフレット読みながら色々考えてると、何とな〜く高評価されてる?理由が分かった気がした。



●かなり『多層的』な作品に思える。『一粒で色んな味が楽しめる』感が評価されたのかな?と感じた。
⚫︎表面に近いところから順に…『法廷モノ→家族の問題を描いた作品→サイコサスペンス』…って感じ。
『千と千尋の神隠し』が…『不思議世界に迷い込んだ少女の成長物語→苦界に沈んだ女性の物語→当時のスタジオジブリ内の惨状を描いた内輪の話』…って見ることができるのと同じ感じ。



●結局、『真相は藪の中』って感じ。主人公サンドラを『クロ』と見るか?『シロ』と見るか?で印象はガラリと変わる。
⚫︎『シロ』だと、『ハッキリしない結末の法廷モノ』、あるいは『家族の葛藤の物語』って感じに見える。
⚫︎『クロ』だと、『氷の微笑(1992)』のような、サイコパス女の完全犯罪モノに見える。職業も同じ小説家だし。


●スヌープ役のボーダーコリーが名演技すぎる(アスピリン飲んだ後の演技は"演技"なのか?それともまさか…😰)。では、スヌープにとってボスは誰だったのか?最後に添い寝してたサンドラだったとしたら…?『事故』のタイミングで息子ダニエルを散歩に連れ出してたのもスヌープだし…完全犯罪の『共犯者』なのか?
スヌープって名前、『スヌーピー』から来てるのか?『Snoop Dogg』から来てるのか?そんなトコだと思うけど…英語だと『snoop』って『詮索』『詮索するスパイ』って意味も有るみたいなので…???
考え過ぎな気はするけど、こんな考え方が出来る『余地』を残して、こんな作風・結末にしてるのかも知れない、と思うと味わい深い。



●前半は、『怪しいけどサンドラは犯人じゃないのかも。主人公だし』なんて観てた。
でも、法廷で『夫婦喧嘩の録音』が流された後のサンドラの『腕組みして苦虫を噛み潰したような表情』が見えた辺からコッチが抱く印象が逆転。



●弁護士ヴァンサンも、昔の恋心を上手く利用されただけにしか見えない(※サンドラを『クロ』と見た場合)。

●結局『犬みたいに忠実な男』が好みで、上手く利用してたのか…なんて思ってしまった(※サンドラを『クロ』と見た場合)。





●夫婦喧嘩のやり取り聞いてると『とんでもねえ女だな!』なんて感じるけど、これ男女逆転させると現代でもありがちな『夫婦の形』に見える。『男って理不尽なコトしてるんだな…』って感じた。まさかその辺も監督の訴えたかったコトなのか?




●劇中で…

サンドラ『私は殺してない』
ヴァンサン『そこは重要じゃない』

…って言ってたから、作品全体として『そこは重要じゃない』のかも知れない。




●主演のザンドラ・ヒュラー、『ありがとう、トニ・エルドマン(2016)』に出てた人だった。俄然『関心領域』も観たくなった。



●観客に『え、結局どっちなの?』『何が言いたかったんだ?』って思わせてるトコロから考えると、文字通り『サスペンス(=宙ぶらりん)』映画と言って良いと思う。



●パンフレット買おうか?チョット迷ったけど、買って良かった。『あ、そういう視点もあるのか』とか『言われてみれば確かに!』なんて思えるヒントもあった。


●『ダニエル、本当は眼が見えてるんじゃないか?』って思ってた。どうやら、うっすら見えてたみたい。
土平木艮

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