いと

落下の解剖学のいとのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.3
何を信じたらいいか分からない戸惑い、自分の知らない父と母を突然浴びせられる。

子どもは自分の身体と心の成長と揺れで精一杯でいいし、大人はどんな世の中であろうと子どもに未来への希望を抱かせ見守るべきなのに。

11歳にして自分の知らない親の姿、両親の歪み、傲慢さと弱さを垣間見てしまったダニエル。
彼のこれからの人生で、誰かを愛し誰かに愛される度にこの日々が幾度となくフラッシュバックして、自分の中にあの日信じられなくなった両親の姿を見出してしまうんじゃないか。子どもと親は別の人間だよ、所詮は他人だよ、あなたにはあなたの人生を生きてほしい。
母サンドラや父サミュエルの傲慢さや脆さは誰しもが少なからず持ち合わせているものだけれど、愛し愛されている親のそれを見るのは想像以上に深い傷になる。



目が見える人が「録音された音声を聞く」ことは大きく“不足”している情報を想像しながら一定の距離を置いて自然とジャッジする姿勢になる。しかし、盲目の彼にとっては、現実と録音の情報としての差は少ないから、録音された両親の喧嘩はダイレクトに心に突き刺さってしまうだろうな。
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