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落下の解剖学のkaoruiのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
開巻一発、傾斜が急な階段を弾まないボールがボトっと落ちてきて、フレームインしてきたスヌープ君が咥えてもって行く。
サンドラが学生にインタビューを受けており、二人の間に怪しい空気が漂ってきた時、
キューバ風の音楽が大音量で鳴りだす。
家の中で生演奏しているかのような爆音でかなり不快。インタビューを切り上げる二人。
雪の中犬と散歩する少年、山荘から離れても爆音が聞こえる。どうやら視覚に障害があるようだ。
山荘の高低、サンドラの性癖、姿を見せない主人の闇、少年、全てを表現する見事なアバンタイトルだ。

今作の多くを占める裁判シーンは手持ちが中心のカメラワークが煩雑で、人混みをかき分けるようにサンドラにズームしたり気を取られるのだが、単調になりがちな会話劇が続く中、僕たちへの監督のサービス精神と受け取ろう。
実際事件の決め手が検事側にも無く、弁護側の反撃も無く、裁判劇、心理劇としても平板に流れていくのだが、複雑に入り組む夫婦の憎悪を少年が咀嚼することに必要な時間(あまりにも過酷だ)でもある。

そうして我らがスヌープ君が体を張って実証し、少年の心の天秤で全てが決する展開には萌えた。
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