夫の転落死は事故か他殺か、それとも自殺か?
犯人捜しではなく、藪の中的な法廷劇だった。結局犯人は分からない。
作家である妻の言い分は、移住は夫の希望で、言葉も不自由な見知らぬ土地での生活を強いられたと、孤独が伝わる。
一方夫側は、夢を諦め妻子優先で子育て家事に忙殺され、挙げ句妻に小説のネタを奪われたと不満あり。
検察の質疑応答は遠慮無くプライベートに入り込み、セクシャリティや夫婦関係の崩壊が浮き彫りになっていく。
視覚障害のある息子は、裁判が進むにつれ、障害を負った後の両親の関係性も知ることとなり、信じていた親への疑念を抱いていく。
子どもが居なかったら、子が怪我を負わなければ、父親の転落死も起きなかったか?
子の視点が入ることで、偏見無く見れた気がする。
法廷でのやり取りは演劇的な感じもしたが、
ドキュメンタリーのような証言シーン(録音音声も)はとても臨場感があった。
記憶の曖昧さ、理想と現実の葛藤、平等、同業者への対抗心、夫婦として時間を共有する事の複雑さを感じた。
裁判はひとつの解釈を出すところ、という台詞が印象に残った。
判決は子が選んだ未来なのだろう。
◼️その他印象に残った事
・犬の演技凄かった。
・夫婦が互いの主張の間をとり、母語ではない第三国で暮らすという選択肢。
・妻の弁護士役の、妻とグルかと思いきや、善人でもなさそうだが一線を越えない絶妙な演技。
表現者(創作者)としてのプライドの高さや主人公の設定が、昨年見たTarを思い起こした。
2024.3.22 千葉劇場