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枯れ葉のatsushiのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.8
アキ・カウリスマキの前作『希望のかなた』はシリア内戦とそれに付随する難民問題への強い想いを感じる作品でした。今作ではそれが、ラジオから仕切りに流れるロシアによるウクライナ侵攻のニュースに変わります。一方で監督が初期に描いていた、所謂”労働者三部作”は、辛く過酷な環境に生きる低賃金労働者たちの強かさを写し取っていました。今作の主人公二人も片やスーパーの店員、片や工事現場の作業員。監督のフィルモグラフィーでお馴染みの職業です。そう考えると、今作『枯葉』はアキ・カウリスマキの紛れも無い最新作であり、しかし原点に立ち返った作品と言えるでしょう。或いは時代が一周したという見方も出来るかもしれません。監督自身、今作は『パラダイスの夕暮れ 2.0』と言っているくらいですから。

シネフィルのカウリスマキが今作を捧げたのは、小津・ブレッソン・チャップリン。小津っぽさは初期の作品からずっと感じていましたが、カウリスマキ作品の独特の空気感はむしろブレッソンの其れだなと言われて初めて気が付きました。チャップリンの言及にしても、監督の作品からずっと感じていた”映画らしい”映画感、言ってしまえばまるでサイレント映画のような佇まいの正体を掴んだ気がしました。それからアル中の主人公ホラッパの人物像はワイルダーの『失われた週末』からの引用でしょうか。

カウリスマキのマブダチ、ジャームッシュの『デッド・ドント・ダイ』を観たおじさん達がゴダールやらブレッソンを引き合いに出しているのを見て、我が身を振り返りました。。

2024/01/31 1回目
【2024年40本目】
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