※酷評です。
目を通したくない方はスルーして下さい。
題材が題材なだけにこの映画を批判すると人でなしのように思われそうですが、実際観ていて作り手のスタンスにものすごく違和感を抱いてしまいました。
ユダヤ人強制収容所の隣で平和に暮らす家族。
隣から聞こえてくる怒号と悲鳴と銃声と機械音。
隣から見えてくる煙。
流れてくる骨。
撒き散らす灰色の粉。
そして人として扱われない使用人。
予告篇で煽る通り、無関心である事の恐怖は確かに描かれる。
どこで産まれたかの違いだけで大きく分かれるドイツ人とユダヤ人の格差。
日常会話のように話される虐殺の算段。
ズシンとくる嫌〜な音楽。
断末魔のような強烈なエンドロール曲。
さりげなく描かれる狂気が凄まじい映画ではありました。
にも関わらずスコア1点代になったのはいらぬ作家性の強さからです。
このような映画で一番大事なのは、いかにその恐ろしい歴史とその背景・人間心理を今の世に知らしめるかだと思います。
なのにこの映画は変に斜に構えた意味深な見せ方をしつこくやってきてイマイチ人に伝わりにくくなる演出をぶっ込む。
キューブリックを意識したであろう構図を多用してくるのも鼻につく。
作り手は「無関心の恐怖」を見せたかったのか。
それとも自分のセンスを披露するための芸術作品を作るのが目的だったのか。
その真意は分からないけどもし後者なら、悲惨な歴史を客寄せパンダにして注目されようとしたかなり悪質な映画だと思います。
自分はこの映画を見てそちらの印象を強く抱いてしまいました。
個人的にA24映画の作家性の強さがすごく嫌いなのでこのようなフラットでない穿った見方をしてしまってるとは思いますが、注目されるべきメッセージ性よりも先に作り手のドヤ顔が浮かんでしまいました。