今まで観てきた映画の、どれとも異なる作品。
五感を使い、劇場にて全身で浴びることにより、
この作品の本質が浮かび上がってくる。
人間が根源的に持つ「無関心」という闇を、
日常風景の対比、異質な音と映像で
じわりと映画内に忍ばすアプローチに、
そこから逃げたくなるような体感をした。
「関心領域」とはよく言ったもので、
作中で描かれるアウシュビッツ収容所の壁を
「見えているもの」と「見えていないもの」として扱われる。
現実に人間が起こした最大の残虐行為、
「ユダヤ人大量虐殺」を用いて、
現在の世界で実際に起きている様々な問題の
「無関心」な人達へ、間接的に訴えかけてくる。
「映画」という覗き穴から観ている観客へ、
ラスト付近のルドルフと目が合うシーンは、
胸ぐらを掴まれた気分になる。
エンドロールでは作品から解放されると思いきや、
耳から離れない異質な音の「ナニカ」で
作品からの「関心」を音で強制的に繋ぎ止められ、
「違和感」「現実」という誰もが目を背けたくなる要素を
映画という「エンタメ」として食らう。
悲しいかな、この「関心領域」を鑑賞する人は、
既に少なからずそれらに「関心」を持っており、
そうでない人ほど鑑賞し、
この「違和感」という「種」だけでも持ち帰って貰いたい。