【関心/You’re the one】
関心領域は狭く、無関心領域は無限に広い。
人間誰もがそうだろう。
この「関心領域」は感想を言葉にするのが難しい作品だ。
アウシュビッツの隣に家を構える家族について云々するのは実に簡単だが、この作品が問うているのは当然のようにそんなことではない。
第二次世界大戦での日本人の死者は民間人を含めると310万人。
これに対してナチスに虐殺されたユダヤ人は600万人にものぼる。
日本人も自分の家族や仲間が命を落とすことに対して恐怖や悲しさを覚えたことは間違いないと思うが、敵兵や旧日本軍が虐殺したと言われている占領地の人々について関心を示しただろうか。
ナチスの兵士だって命の危険に晒されて戦ったものもいるだろうし、その家族は恐怖を覚えただろう。
しかし、役割が異なるだけで、人はこうも関心を異なる対象に向けるのだ。
今や、調査も徹底的に行われ、メディアも発達し、ユダヤ人の悲劇に想いを馳せる人は多いように思うが、当時のヨーロッパではガス室送りになるとは知りもせず、とにかく嫌いなユダヤ人の厄介払いが出来て良かったと思っていた人が多かったのは確かだ。
目の前で殺戮行為が行われなければ関心の範囲の外に追いやられるのだ。
ただ、これが全ての人の本質だとは思わない。
だが、もうひとつ考えなくてはならないことがあるような気がする。
ガザ地区の現状を鑑みて、人々はどんな関心を示し、どんな行動を取っているだろうか。
各先進国政府は人々の関心が出来るだけ、ガザに向かないように祈ってはいないだろうか。
アメリカの学生はパレスチナ人の命を救えとデモを繰り広げ、抗議をやめていない。
僕は、難民支援のために、UNHCRに毎月少額だが寄付をしている。当然、パレスチナ難民も対象だ。それに、中国政府のウイグル、モンゴル、チベット、香港市民への弾圧に対して抗議するアムネスティに署名もしている。
知ったかぶりして、考えたこともない思考停止人間が、国連は機能しないなんていうことを言うが、何か関心を示して行動したことがあるのかそんな人に問いたい。
僕の友人の女性に、こうした国際紛争のニュースは敢えて見ないようにしているなんて言うのがいる。
暗い気持ちになるからだそうだ。
過去にDVなどトラウマを抱えて、こうしたニュースに触れたくないという人もいると思うが、そんな人は、こんなバカなアピールは決してしないだろう。
そう、この女性は、可愛くもないのにか弱な女性だと自分をアピールしたいだけなのだ。
キショい。
たぶん、この映画を観ても、”さすがアカデミー賞の最優秀音響賞!”みたいなコメントだけの人も多いんだろうななんて考えると、やれやれだ。
少しづつでも関心の範囲を広げれば世の中は僅かづつかもしれないが良くなる気がする。
対比というつもりではないけれども、近々、田端に「医学生、ガザに行く」を観に行く予定だ。
なにかやっぱり世の中はおかしい気がする。