まあ素晴らしいけど好みではない部分もある。読むのを楽しみにしていたパンフレットの田野大輔さんの文章が同じく素晴らしい。
ヘス夫妻に着目して描くこと、その方法論として、映画館という空間の「固定されて音を聞き画面を凝視する特性」を活かしたこと。そして今公開されていることの意義深さ。
ルドルフ転属のくだりでブチギレるヘートヴィヒと、聞こえてくる音・見える炎に耐えられず黙って家を出るヘートヴィヒ母というシーンを連続させて語っているのが強い。ここではっきりとヘス夫妻は明確な意思を持って、虐殺や略奪を行なっていることが分かる。(もちろん他にも分かるシーンはある)
聞こえてくる音という重大なモチーフがあってそこに恐怖を覚えるのに、劇伴の付け方が過剰でアンバランスに思えて冷める。また、撮影が完全に好みでなかったし効果としても本当に適切か？と思う。また明確な意思を持っているヘス夫妻と絶対的に観察者でしかない観客という構図に置くことに違和感を覚える部分がある。(北村紗衣さんが書かれていることに近い感覚です)
