murmur616

関心領域のmurmur616のネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

 黒い空のポスターが不気味過ぎて恐々観に行きました。
 頑なに"現場"は映さないものの音や煙、人々の言葉の端々から伝わる収容所の惨状が余計に恐怖を煽ります。人の歯を弄ぶ子供、我が家にしか興味のない母親と悍ましい。塀の向こうで虐殺があっている一方で、単身赴任の夫との別れを惜しみ、あまつさえ終戦後は農業をしようと呑気に話すヘス夫妻の醜さ。無関心過ぎるし、この状況が日常になりえることが恐ろしい。
 ラスト、急に差し込まれる現代の描写がまた怖い。無数の犠牲者の靴などの展示品で、ヘス達の行った所業を示し、そこを黙々と清掃する人々。後世まで残さざるを得ない所業。
 ヘスが階段を降りながら嘔吐を繰り返すのは、自分の所業に対するストレス故?それを自覚していながら虐殺を行なったとは、業が深過ぎます・・・。こちらが見えているかのように見据えるヘスに背筋が冷えました。
 途中で挟まれる収容所に必死にリンゴを隠す少女の場面が印象的でした。リンゴで収容者達は助けられないけれど、少なくともこの少女のように自分の出来ることをするのが大切なんじゃないかなと思いました。
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