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関心領域のKHのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
小さい歪みでも積み重なったらこんなにも、いびつな社会が出来上がるのか。
奥さん達の会話が今まで観てきた映画の中で最も不愉快だった。タイトル的に無関心さを糾弾する自省的な物語だと思ったが、無関心さの範疇をあまりに超えていた。慣れてしまった歪な社会の中で、ふと吐き気を催すシーンが印象的だった。
多分この映画は観客が期待している様な怖いもの見たさの気持ちを満たしてくれるシーンは殆ど無く、ずっとアウシュビッツの塀を隔てた豊かな生活を引きのショットで映し出すことで、その異常性(舞台というか箱庭みたいな感覚)を炙り出している構図になっているため、人によっては退屈に感じるかもしれない。
最後に実際の資料館が淡々と清掃されている映像があった。いくら舞台を作ってフィクションによって語らせようとしても、実際の写真や資料と比べると重みや情報量という点で圧倒的な差があるため、フィクションの中に資料館の映像を入れ込んだことは良かったと思う。(もちろんフィクションにしか語れないこともある)
あまりに歪んでいるが、それがあたかも当たり前かの様に振る舞っている社会の後ろから聞こえてくるノイズに耳を傾けて観てほしい。
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