キョン太

関心領域のキョン太のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.9
淡々と流れていく映像に、ずーんとなる一本。
アウシュビッツに収容所があって、その真隣で所長一家が優雅に暮らしている。
所長である夫、妻、子供たち。共に暮らすお手伝いさんたち、訪ねてきた妻の母、夫の下で働く人々などの様子が本当に淡々と描かれる。

収容所の様子は直接描かれず、家族や周辺の人々の様子を見て、なにを思うかという作品。
中は見えなくても何が行われているかはわかっていて、煙突から煙が上がり、苦悶の声が響き続けている。

何にどう心を向けるべきなのかと考えるのは簡単だし、人としての良心の在り方とかなんとか。浮かび上がるものは山のようにあるものの、じゃあ正しい価値観ってなんだろう、とも思う。
時代の流れ、国のあり方、宗教やそれまでに起きた出来事で簡単に変わるあやふやなものでしかなくて、何処の誰も簡単に非難することなんて出来ないよなあって。

ほとんどの人が一番共感できるのは妻のお母さんだろうと思うし、子供らの未来を案じるんじゃないかな。
みんながみんなそう思える世界が来たらいいのにと思う。
歴史を学び、忘れずにいるべきなのだと。
あとから、見てるだけだから自分はそう考えられる……。


なにもかもがそう簡単じゃないのが世の中なんだと、エンドロールの音楽を聞きながら苦しい気持ちになった。
キョン太

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