花火

関心領域の花火のネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

誕生日プレゼントのサプライズのために軍服を着たルドルフが目隠しをされたまま家の外に誘導される、赤子の鳴き声やプールではしゃいでいる子供たちのワーキャー騒ぐ声が悲鳴というか叫び声に聞こえてくる、庭で弟が手にする雪と問題として語られる焼殺後の灰、会議室やパーティ会場ですし詰めにされたナチス関係者(補足としてそれを見たルドルフの「どうすれば効率よくガス室で殺せるか考えていた」という台詞が出てくる)、そして極めつけは兄が悪ふざけで弟を温室に閉じ込めるくだりなど、人類史上最悪の大罪として絶対化されるホロコーストについて、反転しうるという表現で相対化を試みている。終盤に2023年現在のアウシュヴィッツ収容所資料館の光景が写されるのも、問題の根が普遍的であると言いたいのだろう(そして例のスピーチから察するにそれだけを言いたいわけでもないだろうけれど、暗にホロコーストの被害者であったはずのユダヤ人国家イスラエルがパレスチナにおいてジェノサイドを引き起こしていることも指弾したいのだろう)。ただ『The Zone of Interest』というタイトルが黒味の画面にうっすらと消えて言ったあと旋律のない音楽がひたすら鳴り続ける冒頭はまだ興味を持てたのだけれど、花のアップから真っ赤な画面に移行するカットや密かに林檎を配っている家政婦を写す赤外線カメラの映像なんかはもう「こういう実験映画的なアプローチ斬新でしょ?」と言わんばかりで正直呆れてしまった。
カンヌでグランプリ受賞→米アカデミー外国語/国際長編映画賞受賞、ナチスの強制収容所が舞台、ホロコーストの虐殺行為そのものは画面として描かないなど、やたら共通項のある先行作品としてネメシュ・ラースロー『サウルの息子』がある(鮮やかなほど正反対なのは、『関心領域』が外/『サウルの息子』が中という視点と、例のスピーチに対する反応)のだけれど、『サウルの息子』の方が圧倒的に"映画"だよねとなってしまう。そして宣伝において恐怖というワードが使われていたものの、セルゲイ・ロズニツァ『アウステルリッツ』の観光客たちの方がよほど怖かったよね。だいたい「アウシュヴィッツの中は写さない」をさも真新しいことのように喧伝しているが、クロード・ランズマン『SHOAH』があるわけで。
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