よもぎ

関心領域のよもぎのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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第二次世界大戦下、アウシュビッツ収容所のすぐ隣で長閑に暮らすドイツ人将校の家族達。

良い意味で予告を裏切らないつくり。無関心という名の地獄。
楽しげにプール遊びをする子供達の歓声と並行して絶えず鳴り響く悲鳴と銃声。雲ひとつ無い空の背後に強固に造られた煙突からもうもうと立ち上る何ともいえない色合いの煙。壁際に美しく咲き誇る花々と庭草木に無造作に撒かれる灰。ドイツ人一家の家で下働きさせられているユダヤ人達の姿には『縞模様のパジャマの少年』が思い出された。
壁の向こうの肝心な部分を徹底して映さないのに漏れ出て来るそれ等だけで終始身体が緊張してしまう程恐ろしかった。メインとなる一家の暮らしぶりなんてまるで頭に入らず常に背景に聞こえ続ける悲鳴に耳を塞ぎたくなった。しかしこれは多分壁の向こうに一切関心の無い家族とは真逆に私の関心が壁の向こうにしか無かった故なのだと思うとちょっと考えさせられた。
とはいえあの場所で暮らしながらあそこまですぐ隣の虐殺に無関心で居られるあの家族達(特に妻)が特筆して異常なのだと同じドイツ人である妻の母の逃亡により描かれていたのにはちょっと安心した。

密かに収容所のユダヤ人達を手助けしている少女の姿がネガポジで描かれていたり突然画面全部が真っ赤に染まったり現代の収容所の姿が挿入されたり、随所に意味深な演出が為されていたのも印象的。
エンドロールのBGMまで人間の悲鳴というか金切り声?で構成されているみたいな音楽?だったのは本当に本編から地続きの如く一貫していたけれど、あれはあまりに聞くに耐えないというか頭痛くなる位しんどかった。というか全編通して終始悲鳴がしんどい。
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