2024年116本目
劇場46本目
「どんなホラー映画より怖い」という予告編の触れ込みから緊張して見に行ったが、映画そのものは「平和」な家族の生活を描く、静かで淡々としたものであり、ともすれば「退屈」と感じてしまいがちである。だが、塀の向こうから絶えず聞こえる銃声や悲鳴、煙突から立ち昇る煙などがユダヤ人虐殺の恐ろしさを物語り続け、それに一瞥もくれないヘス家の人々の無関心は確かに恐ろしい。この恐怖は、海の向こうで起こっている虐殺に関心がないどころか、元日以来廃墟のまま放置されている同じ国内の能登の惨状にすら何の興味ももたない日本人にも通じており、考えることで静かに増す恐怖を描いていると感じた。ラストシーンのつなぎ方の鮮烈さも大変印象的だ。
