千年女優

関心領域の千年女優のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.5
国家社会主義ドイツ労働者党の親衛隊将校で、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の初代所長へと着任して妻ヘートヴィヒと五人の子供たちと収容所に隣接する一軒家に暮らすルドルフ・フェルディナント・ヘス。壁一枚を隔ててユダヤ人への非道な仕打ちが実行される中でごく一般的な家族生活を送る一家の姿を描いたドラマ映画です。

ミッシェル・フェイバーのSF小説を映画化した『アンダー・ザ・スキン』で批評家からの評価を得たジョナサン・グレイザーが、アウシュヴィッツで最も長く所長を務めたヘスをモデルにしたマーティン・エイミスの小説を映画化した作品で、ホロコーストを通して人の在り様を捉えてアカデミー賞を始め数多の映画賞にノミネートされました。

『ヒトラーのための虐殺会議』に通じる描かれる出来事が退屈と感じれば感じるほど恐ろしい物語で、自らにも失望を感じます。近年においても「見て見ぬふり」が問題視された事件が数多ある様にこれはホロコースト特有のものではなく、今この瞬間にも誰もが無意識に陥っているアウシュヴィッツ=関心領域の内と外に纏わる人間の闇です。
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