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関心領域のcyphのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.2
貴重な土曜の昼に(しかも公開2日目で)朝にはほぼ満席になってたこの映画をわざわざ観にくる感度を持ち合わせつつ最後までポップコーン食い続けられるモンスターが場内に何人もいて呻いてしまった 僅かな音に耳をそばだてることが特別必要とされる映画だったので流石にぐったりしてしまった あまりに入れ子構造すぎる

映画のテーマが映画そのものよりも語られる(なんなら観なくても語れる)、ということは昔からあるとは思うけど本作はA24がまさにその需要を狙いに行ってるな〜というかんじ 誰も他人事ではない、とか人間の善性と加害性との共存について、とか考えさせられることはたくさんあるけれど、映画としてもう一歩遠く、観る前から鑑賞者が準備し得る教訓以上のものを持って帰らせられる作品だったかと聞かれると正直黙ってしまう まあポップコーン地獄で精神やられてた&聴覚持ってかれてたのでぜんぜん正当な審査ではないのだけど ジャンヌディエルマンフォロワー映画でありつつ、ラストのくだりははっきりとアウステルリッツ 仕事自体の社会的意義とは裏腹に職務を全うしようともがく夫とそのそばで暮らしを整えようともがく妻、転勤を含む辞令に夫婦でてんやわんやしつつ…の時代を超えた公務員(?)はつらいよ映画として喜びも悲しみも幾歳月も思い出した

印象的なディテール→ 仕立てのいい下着を使用人たちに配る このダイヤどこで見つかったと思う? カナダの毛皮 寝床で 「歯を見てる」と答える少年は自分の抜けた歯ではなくユダヤ人たちの金歯を見ている 革靴を洗う 美しいサギの鳴き声は領域内・収容者の列は領域外 司令官殿がぐっと飲み干すショットも誰かの仕事として用意される 燃やされ回収される荷 寝しなの夫婦の楽しい会話 楽しい川遊びからの目を洗われる子ども 夜に馬に「大好きだ」と語りかけ、女を呼び隠部を洗う
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