自然に囲まれた美しい屋敷で平和に暮らす一家の日常が描かれる。
だかその塀を隔てた隣にはアウシュヴィッツ収容所があり、赤ん坊をあやす時も家族の誕生日を祝う時も、塀の向こうからは銃声や断末魔が聞こえる。だが、一家の人々は誰もそれを気にとめず、日々の生活を送っている。
無関心は罪であるか。
映画を見ている我々もまた、海の向こうで今現在も無慈悲に奪われる命を尻目に、こうして涼しい映画館で映画を見て面白いだの面白くないだの言って、ラーメン店の行列に並んだりしている。関心がないわけじゃない、言うは容易いが、なら自分たちはどうあるべきなのか。考えさせられる。本作のある程度の退屈さもまた、試されているかのようだ。
殺戮の場面は一切映らないが、もの言わぬ"もの"が雄弁に訴えかけてくるラストはハッとさせられた。
"音"がきわめて重要な映画なので、是非劇場の音響で体感してほしい。