鳴り響く銃声と断末魔、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす所長とその家族の日常。良作。ドラマやストーリーや過度な人間描写を一切排除して描かれる日常の断片、定点カメラで描かれる説明のないドキュメント、ともすれば退屈になりがちなのに終始心臓に悪い。
かつて人を殺すためだけの施設があったこと、人を効率的に虐殺するための議論がなされたこと、それで成り立つ幸福があったこと、その事実のひとつひとつが重たい。人間の残虐性や悪意を映像から排除しても残る、変えられない事実。いまだ戦争や虐殺が続く現代へのメッセージ。
世界平和を願う誰かがその一方でウクライナやガザで流れる血には無関心だったり、誰しも自身に痛みが伴わないと自分事にできない現実。戦争を終わらせる唯一の手段が教育であると言われるように知識、経験を持って俯瞰的視点と関心の幅を広げないといけない、、という当たり前だけど忘れがちな教訓が得られた。見るならコンディションの良い時、推奨。疲れている時に見ると間違いなく寝るか気分が悪くなる。
