ShinMakita

関心領域のShinMakitaのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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☆俺基準スコア:2.6
☆Filmarks基準スコア:3.8




1940年代の初めのポーランド。軍人のルディと妻ヘディは、郊外の家で四人の子供と赤ん坊を育てて生活していた。ルディの「職場」は家のすぐ隣で、通勤の手間は無い。ヘディは留守を守りながら庭と菜園を増築し、プールも整えて良妻賢母ぶりを発揮していた。リフォームされた家は快適で、周りは自然がいっぱいで最高の環境である。ヘディはいつまでもこの地での生活が続くよう願っていた。しかしある時、上からの命令でルディの転属が決まってしまう。引っ越しを嫌がるヘディのため、ルディは単身赴任を決意。実際には栄転であったが、寒い冬を独りで越すには寂しいものがあった。だが上が決めた肝煎りの「ハンガリー作戦」の準備を守備よく仕上げ、作戦実施のためかつての「職場」に戻ることになった。また我が家で家族一緒に暮らせるのだ…



「関心領域」


以下、環状ネタバレ炉。


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アウシュビッツ収容所初代所長ルドルフ・フェルディナント・ヘス一家の日常を追いながら、単なる「背景」であるはずのアウシュビッツの非人道的行為が彼らの生活と精神を侵食し始めるサマを描き出した作品。狂ってると非難するのは簡単だし、「私は貝になりたい」のフランキー堺のような同情は抱けない一家ではあるけども、彼らの〈普通っぷり〉を見るにつけ、自分だって同じ立場なら同じ生き方をしていた可能性も…と思い至ってしまう。そこにこの映画の怖さがあるよね。関心領域…撮影用語であるこの言葉は、目から入る情報はあくまで広角レンズの中央…庭やプールや家内…を関心領域として捉えながらそうじゃない部分に関心を払えという逆説メッセージとしてつけられたタイトルなのだろう。赤外線カメラ映像は、嫌がおうにも光るリンゴや少女に目が奪われ、ここは文字通りの意味に関心を払っていい部分。ただし少女の背景は一切説明されないのです。
しかし後半になると、視覚情報が俄然意味を持つように変わってきます。ヘディの母が残した手紙には何が書いてあったのか?唐突に挿入される現代のアウシュビッツ博物館の「仕事風景」の意味は?ヘスが降りていく階段はどこへ通じているのか?様々な暗喩に満ちたこれらの「視覚的関心領域」は、凄いインパクトでしたね。ヘスが階段を降りるシーンで〈地獄の階段降りる、君はまだ親衛隊さ〜♪〉とH2Oの替え歌を思いつく俺みたいなバカにも刺さる、トリッキーな一本。ぜひぜひ。
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