「私の夫があなたを灰にして辺り一面に撒き散らすわ」
ここまで非人間的なセリフを聞いたのは初めて。
人間てどこまでも残酷になれるし、他人の不幸に無関心になれる生き物なんだなって。
ラストの主人公の行動というか身体の異変はどう解釈すればいいのでしょうか。
調べると彼は戦後アウシュビッツ(!?)で処刑されるそうなので、その暗喩かなと思いました。
ヘイトの行き着く先に何があるのかがわかる映画ですよね。
昔住んでいた地域にゴミ焼却場があって、いまの技術だから臭いとかはなかったけど、でも風向きは気にしてました。
で、この家族はゴミではないけど(劇中では『荷』と言ってる)焼却場の隣に住んでいるわけで…。
臭いとか気にならないのかなと思ったら主人公(実在の人物)はベジタリアンだったって。
(主人公が煙突の炎を見ながらタバコを吸うシーンがシュールです)
暗視カメラに夜活動する少女が出てくるんですけど、彼女も実在の人物らしい。
彼女だけがこの映画の救い。
(百万歩譲って主人公の義母もかな)
ご婦人方の茶飲み話で出てくる『カナダ』という謎の隠語も意味がわかると、彼女らは人の皮を被った違う何かなんだなとわかります。
奥さんが鏡に写して試着する毛皮のコートは収容所に入った人のものですよね、きっと。
直接的な描写はないけど、人を奴隷(性奴隷も含む)や家畜として扱っていたんだなと。
それでこの映画を観て非難する私たちも少し住む風景が違うだけで同じ穴のムジナだからなって突きつけてくる。
背筋が冷たくなるシーンはたくさんありましたけど、主人公が職員に場内のライラックを大切に扱わないと処分するぞってあくまで業務連絡の一つとして告げるところが地味に怖い。
どうやったら効率良く人を焼却できるかを常に考えてる人がライラックを大事にしろって!?
頭がクラクラする映画です。
出来れば観たくなかったけど、観ないわけにはいかなかった映画。