いずぼぺ

関心領域のいずぼぺのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.7
能動的な思考を求めてくる作品

よく手入れされた家と庭、子煩悩で仕事熱心な夫、庭いじりが好きで夫と子どもたちを愛し地域の婦人たちのコミュニティをまとめる妻、両親に愛されて育つ子どもたち。

ここは夢にみた生活

作中、何も説明はないので私たちは自分の持てる知識だけでスクリーンに向かい合うしかない。目を覆うようなシーンも手に汗握るような展開もない。
一方で私たちはあの壁の向こうで何が起こっていたかを知っているし、3年後に仕事熱心で家族思いの夫の身に何が起きるかも知っている。

彼らがズバぬてけ悪人なのでも、残虐なのでもない。彼らは自分のことを善人で恵まれていると思っている。誰も自分の足下が何でできているかなんて考えない。彼らは関心がなかっただけなのだ。
ヘスの義母(妻の母)が遊びに来ていたのに
急に帰ってしまうシーンがある。彼女は隣人が収容されていると語っていたが、その名前ある隣人と夜毎火の落とされることのない工場の炎の意味を知ってしまい帰ってしまう。
彼女は無関心ではいられなくなったのだ。名前のない誰かではなく名前のある人の身に起こっていることを知ってしまったから。

そこそこナチスものやホロコーストを扱った作品をみてきたが、こんな切り口の作品は初めてだった。A24らしく映像の美しさと音響で心を揺さぶられる。

歯磨き粉からダイヤを探す人間になるのか
夜陰にまぎれてリンゴを配る人間になるのか


6