Fumi

関心領域のFumiのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.5
正直ほとんど期待をせず観たがテーマを抜きにして映画として素晴らしかったので驚いた。撮影、プロダクションデザイン、音などどれもが研ぎ澄まされていてそれでいてきちんとしたドラマになっているところがまず素晴らしい。
『関心領域』というタイトルのすごさ。実際にアウシュビッツ収容所を取り囲む40平方キロメートルのことをThe Zone of Interestと呼ばれていたとのことだがそれとこの作品のテーマが合致しすぎていることに凄みを感じる。

描かれるのは一見家族の当たり前の穏やかな日常。となりから聞こえる不穏な叫び声や地響き、立ちあがる煙、聳え立つ建物はそこに住んでしまえばどんな人間でも一瞬で慣れてしまうものなのかもしれない。

それでもカメラは決して時代にも人物にも寄り添わず、むしろ現代の我々の冷静な無感情な目線に照準を合わせられている。だからこそ湧き上がる恐怖や怒りや不条理にこの作品の意味があるのだと思う。


終わるまで立ち上がっては行けないルールの映画館で観たことを後悔するほどストレスフルなエンドロールも凄かった。原作もこれから読み進める予定だ
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