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関心領域のnurukoのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
アウシュビッツ収容所の隣で幸せそうに暮らす家族という設定とアカデミー賞での監督のスピーチを聞いてこれは観なければ案件だなと思って鑑賞。

淡々とした家族の暮らしが描かれているようで、微妙に違和感を感じる描写がいくつも重なっていくのでその度にぞわっとした。音も効果的で、エンドロールなんかもう怖くておしっこちびれそうでした。

監督の言うように、私たちも今まさに戦争と隣り合わせの世界に暮らしている。そんな中、私はこの映画の誰に当てはまるだろうか。それは逃げたおばあちゃんである。自分の心を守るために惨劇から目を背けがちで沈黙しがちだからだ。

SNSなどでガザの虐殺をやめろと声をあげている人たちを見て賛同しようと思い、でも……とやめてしまう自分がいる。ある程度の知識はあるし、ひっそり署名をしたり首相官邸にメッセージを送ったりもしている。でも人に詳しく説明できるほどの知識はないし、公に声を上げる覚悟が自分にはあるのだろうかと自問してしまうのだ。それに私の猫だらけのSNSにそれは求められているのか?

しかしそんな私のくだらない迷いなんかどうだっていいから今すぐ声をあげるべきなのかもしれない。監督がこの映画を撮ったように。そう思わせてくれただけで、私はこの映画を観て良かったと思う。
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