『関心領域』。
鑑賞後、実にいい題名だなと改めて噛み締めた。
この映画の感想はつまるところ、関心領域という言葉以上でも以下でもない。
まさにこの言葉をじっくり味わい咀嚼する為の二時間だったように思う。
アウシュビッツ収容所の隣に住む所長一家の日常。誰しもが無視できずにはいられない強烈な設定だが、そこに激しい展開やどんでん返しを求めたわけでもなく、ただその事実を観察した。その結果、やはり意外性などはなかったが、それでいいし、それがこの設定を最大限に活かしていたようにも感じた。
所長たちの生活を見ていた観客は、映画の最後に突然とある場所に連れて行かれるのだが、それが鑑賞後感に大きく影響してくるとてもいい演出だった。
その場所に映し出される人々こそ、関心領域の名にふさわしい、善意も悪意もなく、ただその場所に人間が存在している現象を体現していた。
それは、これまでバイアスを拭いきれない史実の出来事に眉間を寄せていた観客達にあまりに呆気なく、鮮やかな絶望を残していった。あの不快極まりない不協和音と共に。