zhenli13

関心領域のzhenli13のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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監督のスタイルを見せよう見せようと狙ってる感じが前面に出過ぎてるかも。監視カメラぽさを出したという不自然に切り替わるショットはまだしも、暗視カメラのような仕様のシーンやダリアのアップから真っ赤な画面になって叫び声が響くのとか、エンドクレジットの音楽もいかにもな不穏さがあざとい。

人類史上最悪の行いのひとつを、常に戒めにしていく必要がある。見せ方はドキュメンタリーでもフィクションでもコメディでもいい。しかしそのことをずっと考え続けているかどうか。感動ドラマにしてしまえば、さも考えてるかのようにも見えてしまう。本作は感動ドラマではないから問われるという面もあるかもしれない。どう扱うかという点に関して、というか根底のところで、ノーランの『オッペンハイマー』での原爆投下の扱いと少し似たものを感じた。

何を「選ぶ」か。何を見て、何を見ないふりして切り捨てるか。生きてくためには、どこかで切り替えて一旦見ないふりをしないと進むことができない。それは誰もが日常的に行なっている。そのことに慣れてゆく。突然インサートされる、現代のアウシュビッツ収容所博物館の開館前に粛々と清掃する人たちの姿。その姿を収容所の塀を隔てて真隣に住んでいたヘス一家と同列に語ることはできない。しかしそのうち見ないふりをしてたものが見えなくなる。バランスをとるかのように赤ん坊は泣き叫び続け、ヘスの妻の母は収容所から見える煙や炎や叫び声に逃げ出し、使用人として雇われた「地元の人たち」は夜中に酒を煽り、少女は夜の収容所のあちこちにりんごを隠す。ヘス一家の選択性・整合性は異常だが、そのことを彼らはおかしいと思っていない。最も極端な例と言えるが、それとほとんど同じことがガザでも起きている。皮肉なことに、犠牲者側だった人たちにより。本邦でも同じようなことをしてきたし今もしている。ということを観ながら考えてた。
しかし私も、映画館を出てしばらくすると忘れてしまうのだ。

映画化した意義はあるのだろう。原作をまずは読まないとだな。
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