Yuichi

関心領域のYuichiのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

これはすごい映画だ。
この映画が現代にあってよかった。

ナチスの将校であり、強制収容所、アウシュビッツで生活している家族のあまりに平凡な数日を描いている。

音や煙は見えるけれども、それ以外の収容所の中身や死の工場の様子は描かれない。

主人公が、新しい焼却施設の打ち合わせをしたり、転勤に気を揉んだり、新しいプロジェクトの成功を期待されたり、そんな毎日の話。

なんの罪悪感もなく、ただ淡々とした生活。
圧巻はラストシーン。
新しく数百万人の命を奪う作戦が実行されることになり、パーティが開かれ、そのあとに、主人公は廊下の奥を覗く。

そこには、現代のアウシュビッツの記念館の開館時間前の様子が描かれる。淡々とガラスが磨かれていき、その奥には、おびただしい量の靴。
死があまりにも多かったことを見せている。

目の前の仕事を実行している時、それは、ただの命令であり当たり前であり、大したことではない。しかし、改めて振り返ったときに、それはとんでもないものになる。

未来にどう記憶されるか、50年後の人々からどう見られるのか。傍観者であること組織に誠実であることが何をもたらすのか。

その危うさをはっきりと見せてくれる。名作。
Yuichi

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