内戦中のタジキスタンを舞台にした素朴な恋のメルヘン&ロープウェイ映画!
ドゥシャンベのロープウェイ操縦士と、モスクワから里帰りしている(タジク語が分からないので生まれ育った街は違うのかも)彼の賭博仲間の娘との素朴な恋物語を、微笑ましくコミカルに描く。
物語はコミカルで微笑ましいが、制作を開始するのと時を同じくして内戦が勃発し、戦火を縫うようにして撮影を断行するという危険きわまりない状況下で、ヒロイン候補のロシア人女優たちに出演を断られたというのも納得。
劇中でも、街には戒厳令がしかれ、常に銃声が響き、曳光弾が空を照らし、死体が流れ着き、難民が住み着き、軍隊が跋扈している。時に人々は逃げ惑い、親族の死を口にしている・・・にもかかわらず、悲壮感が一切無く、ポジティブで、マイペースで、人との繋がりは素朴で牧歌的。
フドイナザーロフ監督らしい、まるで現実と幻の間を浮遊しているような不思議な感覚なのだが、もしかするとコレがソ連的な人々のリアルな感覚なのかも知れない。
タジク語とロシア語、土着的な世界と近代的世界が混じり合った旧ソ連南部らしい情景が、すでに日本人には摩訶不思議で魅惑的。
しかも1992~'93年のタジキスタンの姿が写し撮られているのは貴重。今や次々と廃線になっているソ連製ロープウェイを筆頭に、乗り物や建物や家具、服装からなにから、あの時代の動く生きた景色を眺められるのは眼福。
ヒロインを演じるパウリーナ・ガルベスさん・・・キュートだなぁ・・・ピロシキーズの中庭アレクサンドラさんを思わせる顔立ちから、トルコ系の血が混じったカフカス辺りの人かな・・・と思ったら、スペイン人でした。ビックリ。
台詞は吹き替えです。
まだまだ荒削りだけど、とても好きな作品。