HiromiA

Winter boyのHiromiAのレビュー・感想・評価

Winter boy(2022年製作の映画)
3.4
もうゲイであることを家族が悩んだり無理に強制しようとしたり隠したりする時代は終わった。ルカの家族はそれを当たり前のように受け止めていた。それでもルカの同級生はゲイであることを揶揄したりするので、ルカは自身の性癖によって家族が迷惑をこうむったり悩んだりしているのではないかと思い悩んでいる雰囲気があった。そんなルカにとってゲイコミュニティのあるパリは天国だったのでしょう。天国のぬるま湯につかってしまったことで箍が外れてしまうのもある意味致し方ないのかも。ルカが田舎に帰ってからの展開はまあありがちではあるんだけど、父親の死は自分にだけ喪失感などをもたらすのではないことをいくら頭で理解しても、その喪失感が埋まるものではない。もちろん自殺を図ってもそれが解消されるわけではないんだけど、行き場のない心は未知の領域へ逃避したくなる気持ちを誘導する。ひとによってそれは死なのでしょうから、わからないでもない。それを乗り越えた時、喪失感を埋めるのは再び死への憧れになるのか、別の何かが見つかるのか、ルカはその別の何かをリリオによって見つけることができたのでしょう。しかしその役割はおそらくは家族には担えなかったのでしょう。いろいろな気持ちの揺らぎ、ルカに限らずカンタンや母親そしてリリオ、の描写が切なくて心に染みました。
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