ねぎおSTOPWAR

愛にイナズマのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
5.0
『不器用な言い回し』
これ石井監督に思うことです。エレカシはピッタリですね!
小綺麗でデリケートじゃない分、ゴツゴツしたモノが否応なく迫ってくる。
もちろんこちらがきちんと向き合って考えながら観ないと、心が震えることはない。
お客様扱いしてくれるキラキラエンタメでは決してないので・・だから好きなんですけど。

ゴツゴツしているようで、でも柔らかい純情というか率直な感情が《カッコつけずに》剝き出しになっている。
試写のティーチインで聞いてなるほどな!って思いましたが、「消えない男」って本に書いておいて照れてる😆
でも松岡さんは照れていない。そこにさらに魂が宿ってる。さらに逆算して演技を作ってきたと思ってます。すっごいな、今回の茉優さんは!!

石橋さん、尾野さん、松岡さん・・それぞれタイプも資質も真逆くらいかも知れないけど、きっと石井監督って熱い役者さんたちを震わせるものがあるんだろうなって。

「茜色」の時も尾野さんと監督が登壇されるタイミングで鑑賞出来たんですが、やっぱりそこでもコロナの話題が多かったんですよね。多かったって言うより監督がそこで強く思うことが伝わってきましたし、それが創作に繋がっていたと。
今作ではまた、その渦中での撮影だったということの重要さをおっしゃっていました。
・・Chapter1-2では露骨に提示されます。たぶんそれをどう受けるかは我々任せです。・・ひょっとしたら過激な描写なのかもしれません。でも誰も間違ったことを言っていない。マスクはシュールな皮肉で抜群に笑える!!!過敏な高校生も、おっさんたちも本当の人間・・。
おそらくこれを観ると自身を振り返り、また生きている”今”を、ゾッとしながら考えちゃうと思いますよ・・。

****

石井監督ってあまり石井組みたいな”いつものスタッフ”を作ることを好まないんですかね。撮影も編集も初組み合わせかと・・。違っていたらすみません。
窪田君の公園でのショット、トラックアップで一気に夕方になるのってマジびびりました。お見事!!
編集の早野さんは「せかいのおきく」でも章立てで構成した方。あちらは短編からスタートなので動機は別でしょうけれど。
しかしこれだけスタッフ違ってもきちんとカラー出るって、それはそれで石井さんって凄い方だなあと思いますね。

今の日本映画界の成長に、確実に必要な映画監督だと思っています。
この《天使期の》石井さんのテイストは今作でも十二分に感じられると思いますので、是非劇場でご覧ください!!

**以下はネタバレですので!**













松岡茉優さんは映画によって顔が変わる方で、可愛らしくもぶっさいくにもなれる《生まれながらの女優》のように思います。さらに一つの作品の中でこうも様々な彼女が見られるのも珍しい😆
BARでの窪田くんに(気持ちが)ヤラれてしまうときの変貌には声が出そうでした。人を好きになる顔って”作れる”んだなって。あれはこっちがヤラれます。
最後の「消えない男」からの気持ちが破裂・・弁が壊れる瞬間にも恐れ入りました。・・隣の女性はグスングスン泣き始めましたよ!
家族の前でのべらんめえには大笑い!!・・普通の役者ってこれらを同一人物内に取り込むのって無理ですよ!!
あっ、最初の自分を押し殺す監督の部分もまたね!➡そこが社長に対する長男(池松壮亮)の啖呵と相似形で、これは石井監督うまいなあって。
相似形:モンタージュと言えば、肉が吊るされたショットは何度も繰り返し印象付けられるんですが、そこは縁側で首を吊った友人と見事にリンクするわけで。そこの指摘はないわけじゃないけど比較的説明の少ない描写であり(牛については窪田くんのセリフになっていますが)、人間の死というものすら隠蔽というより人は見て見ぬふりをしているという受け取りかな。あの世の中に85%いるらしい 🤣プロデューサー(MEGUMI)の「残念だったわねー」というかっるい言葉も彼の死を軽んじていて・・たぶん残された窪田くんの「ぼくは生きている」だったかな、そうした主旨のセリフありましたよね。あれは「生きちゃった」にもつながるんだろうなって。


やっぱり自殺とか、無慈悲な扱いとかって当たり前のように人間社会には溢れていて、一つ間違えると誰もがそこに陥る可能性があり、さほどに弱い人間というものがあり、ぶつかり合いながらも家族が助けになり、そんな家族も簡単に誤解しうるわけで・・・

いやあ韓流に負けていない作品は正直少ないと思いますが、間違いなく今作は勝負できる強さがあると思います。