コマミー

ハロルド・フライのまさかの旅立ちのコマミーのレビュー・感想・評価

3.8
【歩くから、生きて!】




※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞





リチャード・エアー監督の「アイリス」や「ハリーポッター」シリーズのホラス役で知られるイギリスの名優"ジム・ブロードベント"が、"800キロ先のホスピスに入院している元同僚"の為に、ほぼ手ぶらで"歩き始める"老人を演じるロードムービーだ。
原作は"レイチェル・ジョイス"という方が手がけた2012年に発表した小説で、本作でも脚本を担当している。

昨年、マーク・ウォールバーグ主演の「ジョー・ベル」という作品を鑑賞したのだが、あの作品は「後悔」から始まるロードムービーであった。本作も極めて似た構造をしていて、本作に関しては衝動的に出ることは多いが、確かに"ハロルド"が旅をする中で「後悔」がテーマに上がってたと考えられる。

そして本作はハロルドのような決意を胸にした人に対しての"周りの見解"も厳しく描いているし、ハロルドにとっての"確かな障害"として描いていた。「フォレスト・ガンプ」や「ジョー・ベル」でも、何か重大な決意を胸にしてチャレンジしている人に対して、その人に共感・賛同したり、その人を"神のように崇める人"も出てくる。周りにとってはその人を想ったり、感化したりしてやってる事かもしれないが、時にはそれが障害となってしまう事になるのである。これは、「フォレスト・ガンプ」では描けなかった要素かもしれない。

そんな色々な傷や障害を乗り越えながら旅をするハロルドを演じたジム・ブロードベントは素晴らしい熱演だったし、複雑な役でもあったし、体力的にもキツイ役なのによく演じたなと感じた。その妻を演じた"ペネロープ・ウィルソン"も、ハロルドの決断に寂しさや戸惑いを抱えながらも、背中を押す役を演じていてとても良かった。後からになって気づいた事だが、2人は過去に「アイリス」でも共演している。
ハロルドの"息子"役には、あのニック・ケイヴの息子"アール"が出演している。彼の演技も実に難しい役所なのだが、実によく演じたなと思っている。

本作は、一見単純なストーリーに見えて、現代に伝えるべき"重要なメッセージ"も伝えていたロードムービーだったなと感じた。明るさもあり、重みも厳しさもある。
名優の体を張った演技も相まって、ハロルドの決断や過去にも充分涙する事ができた。

見て良かったと深く感じ取れる事ができる、自分の中で何か成長できるような感じにさせられるロードムービーであった。
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