DJあおやま

まーごめ180キロのDJあおやまのレビュー・感想・評価

まーごめ180キロ(2023年製作の映画)
4.2
シネマスコーレでまた上映がかかったので、やっと観に行けた!
ママタルト大鶴肥満の持ちギャグ“まーごめ”を追ったドキュメンタリー映画。大鶴肥満が思い出の場所を順に巡り、そこでの思い出を一人で語っていく。ほとんどがロケバスや公園で語るシーンなのだが、その巧みな話術ゆえにずっと聞いていられる。また、語られるエピソードがどれも骨太で、悲哀や怒り、狙い過ぎていないユーモアに満ちていて、大鶴肥満の人間性を好きにならざるを得なかった。

学生時代はいじめられ、友達も少なく、恋愛も上手くいかず、家族との関係も良好ではなかった肥満。そんな肥満を虐げてきた人たちへ復讐することがお笑いを続けていく原動力と語る。その見た目の可愛らしさとは裏腹に内面のドス黒さにグッときた。
このお笑いでカーストをひっくり返そうとするスタンスや、ロシアのmixiこと“Badoo”での裸体晒され事件から、ウエストランド井口イズムを感じる。

語り口が軽快で、知的で独特な言い回しにクスリ。“赤(せき)らめる”や“聡い”などなど。また、時折り挟まる例えの参照元が、ハンターハンターやカイジ、ハガレンというのも胸を掴まれてしまう。
そんな語り口の中で、自分をいじめたやつへの、まだまだ鮮度の高い怒りを露わにして苦しむ姿も愛さずにはいられない。

久しぶりに実家に訪れると、両親とのヒリヒリ感いっぱいのやり合いを展開。去り際に父親から趣味で書いた本を渡されたかと思うと、まるで官能小説のような文体のメールが来るという伏線回収ぶりがお見事。肥満が静かにヒートアップしてしまい嫌味を言ってしまったことを、のちに恥じるところもこれまた愛おしかった。また、実家のソファの窮屈な配置を、「どうぶつの森でしか見ないレイアウト」と表現した真空ジェシカ川北のセンスがきらりと覗かせていたのが印象的。

マッチングアプリで出会った大鶴肥満のことを知らない女性とのエピソードたちは、これぞドキュメンタリーというオンタイム感でドキドキした。初めて恋愛と向き合い、もし付き合えたら他の好きなことをすべて奪われても良いと語るくらいの没入ぶり。その裏には、恋愛の経験を得て、失われた青春を取り戻したいという歪んだ思いがあるのも憎めない。運命の日を迎え、夜の公園でその運命に嘆き、ビッグマックを貪る姿に涙。ただ、そんな自身の不遇の数々が今の大鶴肥満を、ママタルトを作っているという数奇さを語っていたのが素敵だった。

結局、まーごめのことをわかったような、わからなかったような。ただ、大鶴肥満の愛すべき人間性については深く知ることができた。
それにしても、ストレッチーズやさすらいラビー、真空ジェシカ、この世代の学生お笑いシーン強いな。
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