「まーごめ」から解き明かされる、大鶴肥満という男。
今回に関しては1000文字のリミッターを解除して書かせて頂くこと、先んじて謝罪致します。
1文目からママタルトというお笑い芸人を知らなければ絶対に伝わらないであろう文字列を書いてしまい申し訳ございません。
ママタルトはサンミュージックに所属するお笑い芸人で、大鶴義丹さんに顔が似ていることからそう名乗ることとなった、ボケの大鶴肥満と、ツッコミの檜原洋平のコンビです。大学のお笑いサークルで出会った2人でしたが、年々ネタの方の評価も上がってきており、2024年の M-1グランプリでは決勝に進出するほどの飛躍を見せました。肥満さんのダイナミックなボケと、その大暴れに負けない檜原さんの長尺ツッコミが持ち味の、今後の活躍が期待されている有力株です。
本作はそんなママタルト、大鶴肥満がよくギャグで使う「まーちゃんごめんね」、略して「まーごめ」(その他多数の活用方法がある)の真実を伝えるべく撮られた大鶴肥満密着ドキュメンタリーとなっています。
冒頭から「まーごめ」、「まーちゃんごめんね」を説明なしに使っていますが、こちらも由来は大鶴義丹さんにあります。妻のマルシアさんの留守中に自宅へ女性を招き入れていたのを、ちょうど帰宅したマルシアさんに目撃されたことを発端に、2004年に開かれた会見で発された大鶴義丹さんのマルシアさんに対する謝罪の言葉が、件の「まーちゃんごめんね」となります。
本来であれば、これ以上でもこれ以下でもない言葉なのですが、どんな状況であっても胸に右拳を当て右半身を少し前に出すポーズをしながら「まーごめ」と言えば解決するという、万能なギャグとしてお笑い界隈には定着しており、真空ジェシカを始めとした芸人たちがこぞって使っている現状があります。
すみません、説明しなければ伝わらないと思うあまり、700文字強に渡ってママタルトと「まーごめ」について語ってしまいました。
映画に関してですが、お笑い芸人の密着ということもあってか、最初から最後まで笑いどころが多く、劇場からも何度も笑いが起こっていました。(私は2025年3月15日に開催された、再上映イベントにて鑑賞致しました。ママタルトを生で見られたのも、1お笑いファンとして嬉しい限りでした!)
ライブで流したという経緯があるからこそ、真空ジェシカのツッコミ(主にガクさん)が入ることによって、さらに笑いやすくなっている印象がありました。
上記のような笑える場面だけでなく、家族についての内容(特に、祖母と父親に関する言及が至極)も濃く鋭く切り込んでおり、観ているこちらも心を痛めるような会話や時間が流れることもありました。始まりこそ「まーごめ」でしたが、徐々に浮き彫りになっていく大鶴肥満という男の内側が非常に興味深く、作品としても、お笑いの側面、家族の側面、そして何故か比重の大きい恋愛の側面と、幾層にも要素が重なっていて見応えがあったと思います。
必然性は定かではないですが、最後に流れる歌は格好よく、要所要所で見てきた内容を拾っていてまとめ方としては清々しかったです。
ただ基本的に移動中の車内の画ばかりで構成されていますし、ドキュメンタリーだから仕方ないとはいえ光の調整やカメラの動かし方が雑で見にくさを感じてしまう自分がいました。
卒業した学び舎を巡るにしてもアポを取っていなかったのか校内に入って馴染みの先生に会うこともせず、唐突にバラエティ的なノリで苦手なきゅうりを食べさせ拒絶反応を起こしている画を撮ろうとしたり、「まーごめ」の真実を伝えると言いながら最初に口頭で説明された以上の内容がなく、その後の密着が有機的に「まーごめ」につなげられているようにも感じられなかったりと、一ドキュメンタリー作品としては評価が低くなってしまう要素を孕んでいるのも否めないところがありました。前述した恋愛の側面が後半の話の中心になっていってしまったのも、本筋からズレてしまっている気がして残念な点でした。
総じて、ファン以外でも家族との関係性などは身を入れて見たくなる要素となっているけれど、あくまで内輪で楽しむことに重きが置かれた、お笑い好きのための作品でした!