ワンコ

ペナルティループのワンコのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
4.0
【静的マトリックス 】

タイムループというよりアクションが無いマトリックス 、つまり、静的マトリックスという感じだ。

製作者が意図的にしたのか否かは分からないけれども、恋人を殺された怨恨で犯人と思(おぼ)しき男をループする時空の中で何度も殺していくうちに芽生える違和感は、死刑制度って一体どうなんだろうと考えるきっかけにもなるように思える。

村上春樹さんがオウムのテロ事件と向き合い、死刑が執行された際に、被害者の家族や遺族、関係者の気持ちを考えると一概に死刑に反対とは言いにくいと仰っていたが、本当は、国が人を殺して良いはずはないというのは本心のような気がした。

死刑制度のある国で、裁判の判決で死刑が言い渡され、それが確定し、その後、法務大臣が判を押して刑は執行される。

ただし、執行するのは公務員だ。
普通の人なのだ。

システムとしてはスイッチを押す複数の執行人のうち誰のボタンがつながっていたか不明だと云うが、そんなことで人の息の根を止めることに対する罪悪感は消えないと云うのが本当だろう。
これを押すことが出来なかった人も多くいるのだそうだ。

EUではEU加盟の条件に死刑制度が廃止されていることが盛り込まれている。だから、トルコはNATO加盟国であるにもかかわらず、あれだけ望んでいるのにEU加盟には至らないのだ。トルコはイスラム教国で死刑を廃止する気は毛頭ないように思う。

村上春樹さんの言うとおり遺族のことを考えたら、安易に死刑反対とは言いづらいが、だからこそ、普段から冷静な状態で話をするべきだと思う。

こうしたことがテーマになっている映画も最近はある。

映画について言うと、もう少しお金もかけて、山下リオさん演じる唯と伊勢谷友介さん演じる男のヒミツなんかをもう少し掘り下げて描いて、ちょっとしたアクションも入れたら、ハリウッド的、いや、ネトフリ的な映画になるんじゃないかなんて考えたりした。

まあ、いずれにしても静的マトリックスであることは間違いない気がする 。
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