さとむぎ

ペナルティループのさとむぎのネタバレレビュー・内容・結末

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

場面転換も少なく、登場人物も限られており
低予算映画の部類に入りそうだが
ストーリー構成や、雰囲気作りが非常に上手く
限られた手札の中で工夫して作られた面白い映画、という感じがして
非常に好感度の高い邦画作品です。

タイトルの出し方や
映像全体のざらついた感じ
植物工場の物々しさなど
全体的に、映像の作りが無機質でカッコいい。

恋人を殺された復讐者、岩森と
女性を手にかけた殺人鬼、溝口は
憎み憎まれる間柄ながら
『ループから抜け出す』という共通目的の元、
なぜか奇妙な友情が芽生えてしまう、という設定が面白く
2人の掛け合いは、いい意味で気の抜けたお茶の間感があり
殺す殺されるの殺伐とした作品のはずなのに
なぜか居心地の良さを感じてしまいます。

そして、ループ最終日の溝口の心理描写が非常に素晴らしく
岩森に触発されるように大樹の絵を描き始め、
死に際、「怖いから手を握っていてほしい」と懇願する姿に
胸の奥がぎゅっと締め付けられました。
何故こんなにも、この殺人鬼は愛しく見えてしまうのだろうか…。

ただ、全てはVRの中で繰り広げられていた作り話のため、
溝口が本当にこんな人柄なのか、そもそも犯人は溝口なのかすら分からない。
これはあくまで、被害者遺族の傷を埋めるための一時凌ぎ的なサービスであり、
本当に欲しいものは与えてくれない、という虚しさに
「結局は痛々しく現実を生きていくしかないんだなぁ」と思わされる
この何とも言えない感覚が、何故だか癖になってしまう作品でした。
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