このレビューはネタバレを含みます
場面転換も少なく、登場人物も限られており
低予算映画の部類に入りそうだが
ストーリー構成や、雰囲気作りが非常に上手く
限られた手札の中で工夫して作られた面白い映画、という感じがして
非常に好感度の高い邦画作品です。
タイトルの出し方や
映像全体のざらついた感じ
植物工場の物々しさなど
全体的に、映像の作りが無機質でカッコいい。
恋人を殺された復讐者、岩森と
女性を手にかけた殺人鬼、溝口は
憎み憎まれる間柄ながら
『ループから抜け出す』という共通目的の元、
なぜか奇妙な友情が芽生えてしまう、という設定が面白く
2人の掛け合いは、いい意味で気の抜けたお茶の間感があり
殺す殺されるの殺伐とした作品のはずなのに
なぜか居心地の良さを感じてしまいます。
そして、ループ最終日の溝口の心理描写が非常に素晴らしく
岩森に触発されるように大樹の絵を描き始め、
死に際、「怖いから手を握っていてほしい」と懇願する姿に
胸の奥がぎゅっと締め付けられました。
何故こんなにも、この殺人鬼は愛しく見えてしまうのだろうか…。
ただ、全てはVRの中で繰り広げられていた作り話のため、
溝口が本当にこんな人柄なのか、そもそも犯人は溝口なのかすら分からない。
これはあくまで、被害者遺族の傷を埋めるための一時凌ぎ的なサービスであり、
本当に欲しいものは与えてくれない、という虚しさに
「結局は痛々しく現実を生きていくしかないんだなぁ」と思わされる
この何とも言えない感覚が、何故だか癖になってしまう作品でした。