オッサンat岸和田

四月になれば彼女はのオッサンat岸和田のネタバレレビュー・内容・結末

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

原作・脚本・・・愛の破局から再考察するストーリー・・・昭和世代のワシは共感部分は少ないが、現代を俯瞰することで理解はできる・・・(-!-)y-゜゜゜
先のあるものが悩み、先のないものが先を照らす・・・o(;-_-R;)o

若かりし俊は学生時代に春に惹かれ恋に落ち「世界中の朝日を見に行く」旅行を約束をした。
母親から離され男手でひとつ父親に育てられた春・・・旅行の許しを請うため父親に会うが、今では生活のすべてを春に依存してしまうほど溺愛し、精神的に病んでしまっている。
その出発の日、春が「選べない」ことから、俊は彼女をも手放してしまった。

7年後・・・俊は恋愛に不安を抱く患者で獣医の弥生に惹かれる。
俊は春との過去の過ちを繰り返さないため、必死に弥生を繋ぎとめたかのようにみえた。

それから3年、弥生と結婚の準備をしていた俊に、春からの突然の手紙・・・
「あのときのわたしには、自分よりも大切なひとがいた。それが、永遠に続くものだと信じていた」
「わたしのなかではあの四月が、いつまでもぼんやりとした輪郭を保ちながらずっと続いているような気がしています」
日常の中の非日常に不安を抱いていた弥生は春に惹かれ、俊は何も気づけなかった。
弥生の謎賭け「愛を終わらせない方法、それは何でしょう?」
春からの最後の手紙を読んでしまった弥生・・・春への憧れ・・・そして失踪。

弥生が訪ねたホスピス・・・春は何の淀みもなく明るく、やがて遺された人にとって過去となる入居者のスナップを写していた。
俊との関係を隠したままホスピスの看護師となった弥生・・・残された時間が少なくなった車椅子の春の髪を海辺で整える。
今を精一杯に生きる春・・・罪悪感から「実はわたし・・・」と切り出す弥生を制するように「わかってました・・・なんとなく・・・」と優しい笑顔を作ってから振り返る春・・・この先の不安を抱いた弥生をフィルムに遺す。
遺品に彼女が送らなかった手紙・・・春が旅に出た理由に気づいた弥生は標(しるべ)を失う。

俊は送られてきた春の遺品を受け取り、彼女が突然旅に出た理由を知る。
ホスピスを訪ねると、怪訝な様子の婦長から春のカメラが渡される。
大学の暗室で現像すると印画紙に不安気な弥生のスナップが・・・春の本当の「愛」を知り俊は己の成すことにはじめて気づく。

演出・映像・音楽はキャラクタの複雑な心情を美しく秀逸に表現してる!(^-^)v
初恋の頃・・・春のナチュラルな仕草を俊が追いかける淡い演出!( *´艸`)
10年後の現在・・・俊と弥生の恋愛のやり取りを長回しで追いかけるシリアスな演出!(¨ )
緩急効いてて面白い!(^-^)v
海外ロケは文字通り春の独り舞台で手紙の朗読・音楽も相まって山田監督らしい美しさでス!(^_-)-☆

配役、演技は素晴らしい!o(^-^)o
俊=佐藤健はあからさまにメンタルが弱い男性を演じ切り、弥生=長澤まさみは複雑な感情を持ちながらも好奇心(春への憧れ)ある難しい女性を演じている・・・(^-^)v
タスク=仲野太賀はチャラけたようでも自分を持って客観的にアドバイスするBarのマスターに成り切り、春の父:伊与田衛=竹野内豊の娘への溺愛は恐怖さえ感じる・・・(゚Д゚ ;
弥生の妹:坂本純=河合優美、同僚の医師:小泉奈々=ともさかりえ、ペンタックス:中島歩は俊と弥生の関係を指摘する・・・(苦笑)

伊与田春=森七菜・・・彼女しかいない!(^_-)-☆
小さい頃から母親から離され、男手ひとつ父親に育てられた春。
幼い頃から家事・手伝いで、外出での自由が制限されるのが「当たり前」のような生活。
成長するにつれ愛娘と世俗のギャップを埋める手段がなくなり次第に春を溺愛・・・自ら老いを感じる父親は生活すべてを春に依存してしまうほどに。
新しい学生生活で俊と出会い初めて恋に落ちる遅過ぎた思春期・・・「世界中の朝日を見に行く」約束をするが春を頼りにする父親を一人にできない。
恋愛に幼いふたり・・・約束の出発の日が俊との別れの日に・・・。
あれから10年・・・春の短い人生に終わりが近づく。
薄幸、薄命の春・・・けど、あくまでもこれは客観的に見た話・・・(苦笑)

春自身は・・・
春は俊と行くハズだった世界中の朝日を観る旅に出る。
ウユニ、プラハ、アイスランド・・・当時の俊への気持ちと写真を手紙で送りながら・・・ブラックサンドビーチでチカラ尽きるまで・・・。
日本に戻ってホスピスて暮らすようになった彼女は何の淀みもなく、やがて過去の人になる居住者をスナップ写真に遺し、皆で残り少ない人生を楽しむ。
そんなところに新しく看護師の弥生がきて親切に、けど何処か不安気に春の世話を診てくれる。
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のこりわずかな命と知った春は、自分の人生を幸せに終わらせたかったのでは?
どこまでも前向きに「幸せな生涯だった」と実感したかった。
幸せだった頃の自分を思い出し、夢みた旅行に出かけ、チカラ尽きてからはホスピスで「確かにそこにあるもの」を写真に撮って・・・。
偶発的ではあるけど、幸せを願っていた俊の現在の彼女:弥生まで会いに来てくれた。
弥生の表情から現在の俊の状況も察することができた。
春自身のできる範囲内ではあるが、自分の意志で自由且つポジティブに生きた。
春はきっと「幸せな生涯」を生ききった・・・。
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「余命の涙」を前提としたストーリーが敬遠される・・・原作の川村元気のジレンマが春を天使に昇華して「真実の愛」に触れる「俊と弥生」の物語を生んだのかもしれない。
奇しくも彼が過去にプロデュースした映画のオーディションで見つけた天才:森七菜・・・彼女自身決して恵まれた環境ではなかったが、容姿もさることながら女優としての芝居に打ち込む「覚悟」が、伊与田春の生きざまにオーバーラップしたのかも知れない。
彼の「彼女が春としてウユニ塩湖にいる姿が見たかった」・・・この言葉が腑に落ちる。
春・・・時に幼く見える彼女の意志は、純粋且つ崇高で誰の手にも侵せない領域にある。
可憐で美しいけど儚い・・・けど永遠に皆の記憶の中で生きてほしい。

恋愛にテンプレはあっても、あくまで創作者の主観の域を出ない・・・
「善悪」ではない各自の「好悪」の世界・・・
だから恋愛や結婚について答えはない・・・
自分の「正解」は自分しか持ちえない・・・
けど・・・それを「考える」ことに人生を賭けても良いのでは?

PS:
ワシから一つ言えるコト・・・(-!-)y-゜゜゜
劇中の弥生の手紙で「私たちは愛することをサボった・・・」とあっタ!(苦笑)
お互い最初は「赤の他人」・・・二人が親しくなってお互いのコトを知っていくだろう・・・r(^^ )
運よくそれが続いて相思相愛になっいくけど・・・その頃はお互いに相手を気遣い、助けたり、相談し合ったり、お互い踏み込まない部分があったり・・・が絶対にあるハズ!o(^-^)o
それが「心の距離感」!(^-^)v←実質これが「愛」と言っていい!(笑)
嫁はんと連れ添って三十有余年・・・当然、同じ家で暮らして同じ部屋で寝起きしてる!(笑)←いちおう実績としてネ!(^-^)v
でも嫁はんの身内の看病や、初産で数カ月実家に帰ったり、ワシが長期出張で数カ月家を空けたり・・・けど「物理的距離」の近い/遠いは関係ない・・・「心の距離感」は恋愛してた頃から何も変わらない!(^_-)-☆