多感な時期を北九州で過ごしたし、鮎川さんの葬式にも行きたかったくらいなんで香典代わりに観に行ったんだけれど、とんでもなくいいドキュメンタリーだった。
これは全ての登場人物、技術スタッフ、すべての制作に携わった人たち全てが如何に鮎川さんをリスペクトしてるのかが伝わってくる。特に古いライブ映像も鮎川さんのギターがもっとも良く聴こえるようにミックスし直してくれてるのは劇場で観て本当に良かったと思える体験だった。
僕がもし死んで映画を作ってもらえるのなら、この監督にお願いしたいと思うくらいの出来栄えで、そんな映画じゃないと思ってたのに結構グッとくるところが沢山あった。
実はハーフだったという出生の話からデビューのいきさつなど全てを網羅してるようだけれど、ただ一点「DOS/Vブルース」という書籍を出したくらい自作PCに傾倒してた暗黒時代のことには触れてなかった。
実は根がロックな松重豊のナレーション、その松重豊と下北で一緒にバイトしてた甲本ヒロトを始め、影響を受けたロック界の錚々たる面々がエピソードを語ってくれるんだけれど、特に甲本ヒロトの最後の言葉が単なる追悼映画でなくしてくれた。
自分もずっと応援してなかったせいも悔いるんだけれど、どう考えてもシーナ&ロケッツは過小評価だと思う。晩年は小さなライブハウスの映像ばかりだったけれど、大きなフェスのステージでもっと多くの若い世代に体験してもらいたかった。
これはロックギタリストの話でもバンドの話でもそれを支えた家族の話でもなく、あの時代のひとつの地方の話であり、人生讃歌。これは自分の体験が重なるせいで、そうでない人にも是非観て欲しいとは薦められない。でも本当に観て良かった。