コマミー

グランツーリスモのコマミーのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.3
【夢と過酷なレーシング】




私が「グランツーリスモ」シリーズに触れ始めたのは、PS2で発売された「グランツーリスモ4」からだった。それからPSPからPS3、そしてPS4とほぼ全てのプレイステーションの機種の「グランツーリスモ」をやってきた。
"ゲーマー"ほどの実力も車好きほどの知識もないのだが、子供の頃に一番触れたゲームソフトがこのシリーズだった。
そんな「グランツーリスモ」だが、実際に「GTアカデミー」として"レーサーの育成の道具"としても扱われ、実際にそこから新たなチャンピオンも誕生した。

その人が、今作の主人公で"実在する"レーサー:"ヤン・マーデンボロー"だ。
そんな彼の、ゲーマーから"最高のレーサー"に成長するまでの過程を「第9地区」や「エリジウム」などで知られる"ニール・ブロムガンプ"が、映画化した。

ニール監督独自の作家性はあまり感じられない作品であったが、そんな事を掻き消してしまうほど鑑賞中は手汗が止まらなくなるほどドキドキで止まらなかった。
ヤンの"人間としての成長"を扱っただけではなく、これはゲーマーのみならず全ての夢を持つ人に"希望を与える作品"だ。ヤンの人間としての成長を感じれたのは、"ニュルブルクリンク"でのシーンだ。
ただでさえ、プロでも苦難を強いられるし、事故も多いニュルブルクリンク直後の"ある心境や出来事"のシーンがヤンの人間としての成長のみならず、元レーサーである師匠:"ジャック"との師弟関係の強さを確立したシーンでもあった。衝撃的であったが、あれはレーサーとして"素晴らしい魅力,を感じた瞬間であった。
そしてもっと感動したのはラスト…そうあの"ル・マン24時間耐久レース"のシーンだ。あのヤンの"コーナリング"は本当にかっこよかったし、ヤンの真の"覚悟と闘志"を感じたシーンだった。…あっそう、忘れてはいけない…あれは家族やヤンの彼女、ピットや観客…これらの人達の強いロープのような"絆"も感じ、最高だった。

「グランツーリスモ」生みの親:"山内一典"さん役で"平岳大"さんが出てるのに驚いた。良い役だったし、"日本発祥のゲーム"故か、"日産"を含め日本の事が割と丁寧に描かれていて良かった。
"アーチー"が演じたヤンがあどけなさが丁度良く残っていて良い配役だったなと感じた。"デヴィッド・ハーバー"が演じたジャックとの調和もとても和んだし、ヤンの父親を演じた"ジャイモン・フンスー"の柔らかさと厳しさが入り混じる演技も良かった。
唯一の引っかかる点としては、ニール独自の描き方が全く無かった事なのだが、逆を考えればそれを取っ払って典型的なスポーツマンシップな映画として描いたのは良かったのかもしれない。

兎にも角にも、この映画はゲームに慣れ親しんでいる私としてはかけがえのない作品になった。どんな映画になるのか不安だったのだが、それを掻き消してしまうほどの納得な実話ベースのゲーム映画化作品になった。

是非とも劇場で体感してほしい作品だと伝えたい。
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