三樹夫

グランツーリスモの三樹夫のレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.3
グランツーリスモが上手いゲーマーをスカウトして、レーシングドライバーとして育て実際のレースに参加するという実話。グランツーリスモにハマってる奴は車に興味のある奴だから潜在的な日産の顧客だ、ゲーマーをスカウトして実際のレースに参加すればプロモーションになると、日産どんなマーケティングしてるんだと思わせる、オーランド・ブルームがいきなりかましていて面白かった。グランツーリスモはシミュレーターとしても優れていると、日産とソニーの清々しいまでの広告映画となっている。それでも、ゲームやりこんでたら現実世界でも大活躍と夢のある話なのかもしれない。

映画の中身はというとカーレースのスポ根ものになっており、『エースをねらえ!』のテニスがカーレースに置き換わったみたいな王道スポ根ものだ。登場人物や設定、ストーリーなど本当に王道で、ゲームあがりのため他のドライバーやメカニックから初心者とバカにされる主人公が元レーサーの鬼コーチと厳しいトレーニングを重ねて栄光を目指す。嫌味なライバル的キャラもいると、もう100回ぐらい見たスポ根もののフォーマットでカーレースを行っているため、安心感が漂っていると思う。
この映画は日産とソニーの清々しいまでの広告映画と前述したが、それ故工業製品のようなところもあり、良く言えば王道悪く言えばテンプレとも言える。ライバルはいるがお蝶夫人のような魅力的なライバルではなく、影の薄いただの嫌な奴ぐらいでしかない。主人公の家族とのやり取りや、作中背負うトラウマや、仲間との信頼関係は、スポ根ものならこういう要素あるよねといった感じのものすごい表層的で、作品というよりは商品といった工業製品感が漂う。監督のニール・ブロムカンプの演出力が及ばずというのがあるが、この映画は工業製品なので誰が監督しようが同じようなものが出てくるだろうし、ひとえにニール・ブロムカンプのせいとも言えない。

カーレースシーンは、ゲームのグランツーリスモを意識したカーレースとなっている。そのせいなのか、単に演出力不足なのか、細かいカット割りにせわしなく動くカメラ、インサートされまくるエンジン駆動と、やたらチャカチャカしておりカーレースシーンの迫力は『フォードVSフェラーリ』や『グラン・プリ』などと比べると低い。
このチャカチャカした演出は単にカーレース演出のノウハウがなかったのか、それとも自信の無さや不安の表れか。エンジン音のみをBGMに車がすごいスピードで爆走しているだけで画になるのに、ニール・ブロムカンプは車好きとのことだけどなんでこんなチャカチャカした演出にしたんだろ。マイケル・ベイの『アンビュランス』みたいにしたかったのかな。
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