三樹夫

バティモン5 望まれざる者の三樹夫のレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
3.7
老朽化を理由に移民が多く住む団地が取り壊されようとしている。そんな中で市長が急死し、クリーンなイメージの小児科医のおっさんが棚ぼた的にお飾りの市長代理に据えられる。ただこのおっさんが無自覚的ファシストのスーパー無能のクズで、市政と移民との間で争いが起こるというもの。
市と移民の対立という単純な構造ではなく入り組んでおり、移民もデモとかして何か意味あんのみたいな冷笑したり、副市長がどう考えたってお前も移民か移民の子供だろうに「施しは受けてない」と典型的な右派的マッチョムーブかましてきてたりする。排外主義者が喜びそうな言動を内面化し名誉フランス人みたいな振る舞いをする。無能ファシスト市長もゴミクズ野郎だからそのままゴミクズ市長になったのではなく、政治家というシステムに入ったのでこうなったというような描き方をされている(劇中で地元出身の奴でも政治家になればエゴに走るというような台詞がその証左になっている)。

高い金利のローン払って安い金で団地を追い出されるのは実際にフランスで起こっていることであり、急に団地から出ろと言われてベランダから家具を出すのも実際にあったこととのこと。
明らかに移民への嫌がらせだろう行政システムが連発し、エレベーターもないようなボロのせっまい団地に押し込められ、新たに作られる団地は大家族お断りの作り。大量の書類を要求され許可も下りない。法律だからとか決まりだからというのを建前に、移民に対し嫌がらせや排除をしてやろうというのをもの凄く感じる。劇中で「選択的移民」というワードが出てくるが、これは高度IT技術を持っているような人物を移民として受け入れるというのに加えて、フランスではそういった人物に該当しない移民は追い出すという状態になっているとのこと。劇中シリアからの親子は歓迎され手厚くされていたが、あれはクリスチャンなので信じている宗教が一緒ということで選択的に優遇されている。
スーパー無能ファシストクズ市長は、嫌がらせでしかない施策をどんどん進めていき挙句に警察までぶち込んでくるが、夜に未成年が集団で出歩くの禁止はタイヤ投げられたことに対する私怨でやってるだけだろとしか思えなかったな。このおっさんが市長代理になってからやっていることはただのファシストでしかないが、本人にその自覚は全くないだろう。ファシストに限らずレイシストもその自覚はないと思うが、自覚がないからこそ酷い振る舞いができるんだろう。このスーパー無能ファシストクズ市長絶対許せねぇとなるが、最後は行き場のなさが漂う。ただアビーに代表されるような若者に希望が託されるという感じではある。
三樹夫

三樹夫