TKE

グランツーリスモのTKEのネタバレレビュー・内容・結末

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

事実を元にした映画。
…とは言っても、実際のところ、主人公である青年ヤンがレーシングゲーム「グランツーリスモ」のトッププレイヤーであり、プロレーサーになったのは事実のようですが、参加したレースや細かい結果は違うようです。

まあ、あくまで「事実に基づいた映画」でありノンフィクションではないので、どこまで許容できるかは見る人次第かな…とは思います。

個人的には王道のレース物で、分かりやすい主人公の成長物語となっており、見やすくて面白いと思います。


以下、ネタバレあります。

プロサッカー選手の父を持つ青年ヤンは、幼少の頃からプロレーサーになることに憧れていたもののその環境はなく、日本のゲーム「グランツーリスモ」をプレイし、トッププレイヤーとなっていた。
そんなヤンに父は、将来のためにも大学へ行き就職しろと心配するのだった。

その頃、日産のマーケティング部門であるダニーが「グランツーリスモのプレイヤーをプロのレーサーにするためのアカデミー=GTアカデミー」を創設する計画をたて、元プロレーサーのジャックをトレーナーとして迎えていた。

ヤンはグランツーリスモによる選抜レースを見事に優勝し、GTアカデミー入学を果たす。
実際のレースとゲームのレースの違いに翻弄されながらも同様に選ばれたライバル達と切磋琢磨し、ついにプロレーサーとしての一歩を踏み出すのだった。


今作は2時間超えの作品になっており、GTアカデミーでの選抜はいわゆる序章で、ここから「FIAライセンス取得編」「ル・マン参戦編」と続いていきます。
ライセンスって何?ル・マンって何?とレースを知らない人は「?」が浮かびそうですが、なんとなくザックリ説明してくれるのでご安心下さい。
特に重要レースについては毎回ナレーターの方が説明してくれます。

このライセンス取得の部分でゲームと現実の決定的違いである「リセットできない人間の死」が出てきて、ヤンは叩きのめされるわけですが、ここからの復帰は胸熱でした。
愛想が悪くて頑固なトレーナーであるジャックが、ゲーマーとして見下していたヤンの本気の努力に感化されて関係性が変化していく流れは、単純ながら泣いちゃいます。

最後のル・マンは3人チームによる24時間の耐久レースですが、ここでかつてのライバル達の集結や父親との確執解消シーンにも涙。
特に父親とは仲が悪く描かれているのですが、それでも随所にリスペクトを感じる伏線が貼られており、命をかけたレースの前に和解できて本当によかった。

自分の涙腺がゆるくなってきてるだけなんですが、人間ドラマとしては高評価です。


レース部分も、もはやゲームなのかCGなのか本物なのか自分では全然区別つかないくらいに馴染んでおり高クオリティでした。
要所要所にグランツーリスモっぽい演出を入れているのもよかったです。

ただ、基本的に車を見せる演出が多く、圧倒的スピード感や疾走感、レーサーの息苦しさや緊張感(事故時の一人称視点は怖いです)はあまり感じられなかったような気はしました。

総じてレベルは高いのですが、もう1つ欲しかったかな…という印象でした。


また、他の方も語っておられますが、レースとしてはおかしい部分も結構あります。
あからさまな宿敵が分かりやすいように接触して事故起こさせてお咎めなかったり、その結果自爆して炎上してもピンピンしてたり、同じ性能のマシンに乗ってるのに最終直線で逆転できたり、急減速から急加速してイン攻めしたり、さすがにゲーム過ぎません?みたいなご都合展開もありました。

そこをエンタメとして受け入れられないと純粋に楽しむことは出来ないかもしれません。


素材が素材なだけに、日産とソニーの販促映画感は拭いきれませんが「ゲーマーだった青年が夢を叶えプロとなった」という成り上がり部分は紛れもない事実ですので、夢のある映画だと思います。

残念ながらGTアカデミー自体はすでに無くなっているようですし、今はゲームのプロやeスポーツというジャンルが出来ている中、果たして今後同じような例が出てくるのかは分かりませんが、出来ることなら各企業がこういった取組みをしていって欲しいなぁ…と願います。

なにはともあれ、世界中を虜にし、リアルさを追求したゲームを開発した山内氏と日本のクリエイター達には尊敬の意しかありません。
素晴しき作品を世に出してくれたことに感謝っ!
TKE

TKE